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適度に
碧が倒れた日から数か月が経った。厳しい残暑が続き、突然気温が下がる、という事態が起きていた。その間『Connect Edge』ではあるイベントに向かって着々と準備が進められていた。主にこの会社の繁忙期は秋から冬にかけて行われるイベントに向けての準備期間にあたる。
「碧、そっちの会社のアポとった?」
「いえ、まだです。しかし予定が遅れるとされていた事業から先に連絡が来ています」
「おっけ、了解。できればさっきの会社の許可を早めてくれると助かるな」
「了解しました」
上岡と碧はというと近頃ずっと働き詰めだった。前のように三人そろって一緒に食事をする、というような悠長な時間の使い方ができないほどだった。一方御子柴はというと彼もまた忙しさに駆られながら仕事をしていた。
「御子柴さん、当日予想される環境のデータ届きました」
「御子柴、この会社の製品じゃこれが限界だ。空調管理だけでも負担がデカい。こっちの機械なら……」
「データありがとう。それと早瀬、前の機械で限界なら買い替えろ。予算内でな。上には俺が言っておく」
「ありがとう」
イベントは屋内外、どちらも行われるため休憩スペースが必須になっていた。他にも様々な設備の点検や発注、改良などを御子柴は担当していた。この忙しさに体調を崩さないように、と気を遣うことだけで精一杯だ。
「碧、そろそろ休憩入って」
「すみません、あと一件電話対応が残っているのでそれが終わってからにします」
「わかった。俺はちょっと出かけてくるから、何かあったら呼んでくれ」
「はい」
バタン、と思い扉が閉められる。
この時期になると碧の負担は大きかった。社長である上岡に送られる書類やデータすべてに目を通し、統括としての仕事がやけに多くのしかかる。また、社長秘書も兼任しているのであればその負担は尋常でないものだ。
普段は別々の部屋で作業をしている二人だが、この時期だけはずっと同じ部屋で作業をしていることが多い。それもいちいち部屋の出入りをしていたらその分時間がもったいない。秘書と統括を兼任している碧だからこそ許された職場環境なのだ。
「もしもし、私『Connect Edge』の向井、という者ですが、少々お時間いただいてもよろしいでしょうか?……はい、かしこまりました。では本日の3時頃に向かわせていただきます。失礼します」
いまから出れば、間に合う。できるだけ先方に負担をかけないのが碧の仕事のやり方だった。その為ならば自分の身が犠牲になってもいい。碧は十分に栄養補給できていない体で取引先の会社に向かうのだった。
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