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当日

―イベント当日  秋風が冷たく冷え込んでくる季節に『Connect Edge』のイベントは開催された。碧と御子柴、そして主催者の上岡はいつもの会社のビルではなく、イベント会場に直接出向いていた。 開城が見渡せる少し高い場所に主催側の本部テントは合った。そこで上岡は同居人二人にあることを告げた。 「碧、御子柴、本当に今日までありがとうな」  柄にもない事をした所為で上岡の顔は通常時に比べて少し赤かった。 「なんですか、急に」 「まだイベント始まってないですよ?」  まんざらでもない、と言った表情の碧と驚きが隠せない御子柴。まだスタッフもまばらな時間に伝える、ということは上岡が本気で感謝をしているということだろう。 「いや、二人には先に言っておこうと思って。これからもよろしくな」 「最初からそんなしんみりしないで下さいよ」  年なのかもな、と冗談じみた事を言う上岡に碧と御子柴はそっと微笑む。 「じゃあ今年も楽しみつつ、成功させような」 「はい」 「当然です」  挑戦的な上岡の笑みに答えるようにあとの二人も目を見合わせた。 「そろそろ他の人たちも来る頃だな」 「じゃあ俺、先に持ち場についてます」 「よろしくな」  そういって御子柴は自分のテントへと足を進めていった。それを見送った碧と上岡も始まったばかりのイベントへと静かに意気込んだ。  イベントが始まって数時間が経った。朝の寒さとは打って変わって、なんとか動きやすい温度にまで気温が上がった。朝の時点ではなかった屋台やバザー、簡易ステージがあたり一帯を埋め尽くしている。イベントの範囲内の巡察、とでもいったところだろうか。碧は会場全体の雰囲気を模索していた。 「あ、碧さん!」 「御子柴……って、お前。めっちゃ楽しんでんじゃん」  屋台の視察に向かうと両手に焼串を持った御子柴に遭遇した。 「俺の担当までまだ時間あるんで、そのついでに腹ごしらえでもしようかなって」 「楽しんでいるようで何より」 「それより碧さん、この後一緒にどうですか」 「え?」 「一人で回るのちょっと寂しいんで、一緒に回りません?」  強制じゃないですけど、と付け加えて御子柴は串にささっている肉を一かじり。碧は弓弦から楽しめ、と言われていたことを思い出した。同時に先日の自分の痴態も思いだした。 「あ、う、うん」 「あのー、もしかして嫌……でしたか」 「いや、そうじゃなくて、えっと、その……なんでもない。まわ、ろう、回ろう!」  碧の回答の歯切れの悪さに御子柴は勘違いしてしまったようだ。必死に弁解しようとする碧だが、タジタジになってしまってうまく言語が紡ぎだせていない。そんな自分を隠すように碧は御子柴から目を逸らす。 「どこか行きたいところとか、ありますか?」 「いや、実は特に決めていないんだ……」 「じゃあ、あそこ行きません?」  御子柴が指をさした方を見ると、そこには髪飾りやハンドメイドアクセサリーを置いている店だった。通常時の仕事でも時々名簿に名前が載っているのを何度か目にしたことがある。 「行こうか」  碧は相槌を打ち、御子柴の後ろをついていった。

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