23 / 34

装飾

「いらっしゃいませ」  ブースに寄るときらきらとしたアクセサリーやヘアピン、ゴムなど様々な種類の作品があった。中には男性でも使いやすいようなデザインのものもある。 「碧さん、こういうの好きですか?」  御子柴は手に持ったシックなデザインのピアスを碧に見せた。碧は声をかけられるがままに御子柴を見ると自分の好みのピアスがあった。すぐに買おうとしたが、もう少し商品を見たいのでまだ買わない。  嫌いじゃない、とだけ伝えて自分も並んでいるアクセサリーに目を通す。  碧はあまりアクセサリーを付けない。しかし学生時代に開けられたロブになんとなくピアスをつけていた。仕事に支障が出ないように今は黒くて丸い目立ちにくいものをつけている。たまには揺れるピアスをつけるのもありだろうか、などと思案に更けている。 「何かお探しですか?」  長く店の商品を見ていたからだろうか。レジの番をしている同年代ぐらいの女性に声をかけられた。 「いえ、素敵なデザインだなと思いまして」 「わぁ!ありがとうございます!あの、お兄さんは何かつけられないんですか?」 「俺、ですか?」 「はい!素敵な髪なのでなにかしないのかなって」 「特には……でも、この際やってみるのもありかなって」 「ぜひぜひ!ごゆっくりどうぞ~」  学生時代の名残でいまだに髪を伸ばし続けているのもあって碧の髪は腰にまで届いていた。普段はいつも黒いゴムでまとめているだけで、特段なにかつけている、ということはなかった。 「碧さん、こういうの似合いそうですね」 「きれいだな」  御子柴が再度商品をもって碧の近くに来た。手元をみると、レジンで表現された宇宙と青い花を封入した髪ゴムだった。今の碧のダークグレーの髪色に映えていいかもしれない。今度こそ購入を、と思ったが先ほどのピアスも捨てがたい。どちらも買えばよいのだが、生憎今の碧の所持金はそこまで潤っていない。視察のみの予定だったから多く持ってきてなかったのだ。 「買いますか?」 「あぁ。せっかく御子柴が選んでくれたから。買う」 「お気に召してよかったです」  御子柴からゴムを渡され、早速レジの女性に商品を渡して会計を済ませる。その間も御子柴はストラップや小物を一生懸命に見ていた。 「御子柴。次行くぞ」 「あ、はい!じゃあちょっと待っててください」 「わかった」  時間はまだあるが、碧はそろそろ次の店舗にも行きたくなっていた。せっかく御子柴が誘ってくれたのに、断り、置いていくのは失礼だろう、と店の外で待っていた。片手には先ほどのヘアゴムを入れた包みを持っている。 「お待たせしました」 「何か買ったのか?」 「ちょっとだけ。でも中身は秘密です」  御子柴は指を顔の正面に当てるとしーっというような動作をした。碧は不思議な奴だ、とおもっていた。

ともだちにシェアしよう!