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帰宅準備
碧がハルカと別れた後、すぐに御子柴達が待っている空きスペースに向かった。早く屋敷に戻って一緒にレモネード を飲みたい。その一心で小走りになりながら二人の元にたどり着く。
着いたら御子柴が碧にすぐ気が付いて声をかける。
「用事、終わったんですか?」
「待たせてごめんな」
「いや、それより碧。その手提げ袋、どうしたの?」
「差し入れです。本部テントの斜め前のブースにレモネードがあったでしょう?あそこの店主さんが持ってきてくれたんですよ」
「それで受け取りに行ってたんですね」
「そうそう」
碧はただただレモネードの差し入れが嬉しかった。その喜びを誰かと共有したい思いでいっぱいで御子柴の少し熱い視線に気付いていなかった。
* * * *
「じゃあ、現場は大方片付いたみたいだし、俺たちも帰るか」
「あ、俺車取ってきます。ちょっと待ってください」
「了解」
現場の最高責任者である碧と上岡はすべてのブースの後処理を見届けてやっと帰り支度をする。先に帰るのも申し訳なく、御子柴も一緒に片付けが終わるのを待っていた。
すべての業務が終わり、あたりはもうすでに薄暗くなり始めている。昼間のような温かさもなく、肌寒い温度にまで低下した。あれだけ居た人だかりもなくなってしまえば寂しいものだ。
「碧さん、頑張ってましたね」
「そうだな」
碧が車を取ってくる間、上岡と御子柴は少し会話をする程度で少し重い沈黙がその場を包んでいた。普段、碧を介して話している関係であまり二人の共通の話題はなかった。それこそ、碧の話題ぐらいしかないのだ。しかし、二人とも共通して言えるのは碧が今日、よく頑張ったということだった。数か月前の碧を知っている二人だからこそといえるだろう。
「お待たせしました」
「あぁ、御子柴。前側乗りな」
「お言葉に甘えて。失礼します」
「あ、弓弦さん!レモネード、倒れないように抱えててください」
碧はまさか自分の隣に御子柴が座るはずない、と思っていた。いかんせん、普段と逆の座り方は今までになかったのだから。今、社内は上司にレモネードを抱えさせる秘書、というシュールな図になっている。御子柴はその状況にふと顔が緩んだ。
「乗った?」
「はい」
「帰ろうか」
「出しますよ」
上岡のゴーサインで碧は車をゆっくりと出す。黒塗りの高級車を運転するのは碧に少しだがプレッシャーを与えた。
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