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第9章 まるっとあきらめて王子サマのものになりますよ 4
このまま落ちてしまいたい。相手は誰でもいい、高まったコイツを抜いてしまいたい。そう思う一方で、男なんかには絶対あり得なかった俺が、無抵抗ってな状況になんというか、諦めのような境地になっていることに気づかされる。
男でもいけるタイプだったのか、アルフィーだから抵抗しないのか。
いや、きっと後者だ。
アルフィーだから、俺は抵抗しないんだ。俺も、こいつに惹かれているから――あ、いや、それは人として、上司としてだなっ。
「あ……やっぱり……くぅ」
首筋にかぶりつかれて舌で愛撫されたら、体が快感を拾ってわなないてくる。
股間が、熱い。
チュツと音がして肌を強く吸われる。その痛みすら今は快感につながってしまってどうしようもできない。
ああ、だけど、やっぱり、ここは男の矜持として跳ねのけないといけない。
ああ、だけど、やっぱり、気持ちいい。
「アル、フィー」
「私のものだ」
熱い吐息が鎖骨にかかって痺れる。
「お前は私のものだ。いかなる者でも、私から奪うことは許さない」
なに、言ってやがるっ。
「バカかっ」
「シン?」
「かっ、かよわい、乙女じゃねぇってのっ。俺は俺の意志で決断して、行動するんだ。誰のものでもない、俺は俺のものなんだから、それ、くだらねぇっての」
「……そうか」
「くぅっ」
急所を強く握りやがってっ。
「じゃあ、やはり力で奪うべきか」
「は、あ? えっ、待てよっ」
「待たない」
両腕を完全に掴まれてベッドに押さえつけられ、腹のあたりを愛撫されたら一瞬で頭の中が真っ白になった。あまりに発する快感が性器に近くて、そこじゃないと、激しく訴えて疼く。
「くあ、っ、やめっ」
さらに下穿きの上からアソコに強く吸われたら、もうダメだった。イキたいばかりで血流が股間に集まってきて、ビクビクと小刻みに震えている。下穿きを押し上げて、痛い。
「アっ、アル、あうっ」
さらにズッズッと吸われたら、完全に勃ち上がった。
「窮屈そうだ」
「あ、よせっ!」
最後の砦(これだって女にあてる言葉だろっ)をなんなく奪われて捨てられ、恥ずかしくも天井を向いて反り上がっている息子の姿に羞恥する。温泉でもどこでも男同士真っ裸であることは慣れているが、欲情して反り上がっている姿を見られることはないから、これって耐え難いほど恥ずかしい。
「先に抜いて楽にしてやる」
い、いい、って……そう言いたいが、アルフィーに掴まれている場所がジンジンと熱くて爆発しそうだ。こうやってこの前も抜かれたんだ。
あの時は無我夢中で必死だったけど、今思い出せば恍惚となるほど気持ちよかった、と思う。
「ひゃううっ!」
またしても咥えられ、情けない悲鳴が出た。
吸ってしゃぶられて吸ってしゃぶられて、を繰り返され、限界はあっという間だった。頭の中が真っ白になって、せり上がってくる苦痛に歯を食いしばって耐える。
まだ、ダメだ。まだ足りない。でも快感の衝撃は全身を駆け巡り、肢体を痙攣させる。
「く、うううっ」
ぎゅっと強く目を閉じて膨れ上がった愉悦を開放したくて必死で足掻く。
「ふああああああっーーー!」
下腹をぐっと押されたら、俺の中でデカいものが爆発した。
「――――――――――――――!」
得も言われぬ悦楽に歓喜し、わなないてピクピクと痙攣しているのがわかった。
気持ちいい。たまらない。文字通り極楽浄土にいるような多幸感が俺を包み込んだ。
目を閉じたままベッドに四肢を放り出し、弛緩する。はあはあという俺の荒い息づかいが聞こえてくる。呼吸をするだけで精いっぱいで、気だるくてなにもできない。
「シン、今夜はこれでは終わらないぞ」
へ?
アルフィーが不敵に笑っているのを見て、ゾゾゾっと背筋に悪寒が走った。
まさか! というか、それしか考えられない。
待て!と叫ぶ前に肛門に激痛が走った。
「ぐうううぅっ」
指を突っ込まれて体が拒否反応を起こしている。
「痛いから、やめてくれっ」
「こんなに硬かったらお互い辛いだろ? ほぐさないと」
やっぱり!
「ダメだ! 自分の気持ちを押しつけるつもりはないって言っただろっ、さっき!」
「まぁな。だけど、やっぱり今すぐほしいんだ。私を好きにさせるのは時間をかけてやるが、こっちは行為の問題だから多少心が伴っていなくてもできるだろ」
「そういう問題じゃないっ。イヤだ、ダメだから」
怒鳴って腕を振ってアルフィーの体を遠ざけようとしたが、逃げることはできなかった。
「ぐううっ」
さらに奥まで指を突っ込まれ、中で指先を曲げられた時に激震が走った。
「!」
声すら出ない衝撃。
目の前に星が飛ぶ。
「ここか。どうだ?」
またしても動かされて擦られ、衝撃が起こる。
なんだ、これっ。
「性感帯は全身にあるが、ここにもあるんだ。体の内部にあって、しかも奥深い場所だから感じやすくてイキやすい。ほら」
「ひいいいっーー!」
腰が、体が、跳ね上がる。自分じゃどうしようもできない。
「や、やめっ、やっ、め!」
「お前だけイッてズルいだろ? こっちだってもう限界なんだ」
そんなこと言ったってっ!
「まだ硬いが、ちょっともうムリだから、許せ」
はあ!? それこそムリだって! つか、イヤだよ。
肛門に硬くて太いものがあてられた。それがなにか同性の俺がわからないはずがない。
いやいやいやいや、それは絶対イヤだ。アナに突っ込むのが男であって、突っ込まれるのはプライドが――
「シン。お前のことを考えると私の頭の回路が狂う。お前のためなら、すべて失ってもいいって思ってしまう。いけないことだとわかっているのに止められない。長く共にいたわけでもないのに、不思議だ。自分で自分がわからない。もう、自制できないっ」
……アルフィー。
ダメだ、ほだされてる。こいつならケツの穴くらい安いもんだって思ってしまう。
いやいやいやいや、それこそダメだろうっ、俺!
だけど――
「あ、やっぱりダメだ、ムリだっ」
咄嗟に言葉が出た。良いとか悪いとかじゃなく、物理的にムリだ。こんなもん入るわけがないっ。
「肛門は限りなくほぐれるから大丈夫だ」
ウソー!
グイグイ押されて目から星が飛ぶ。痛くてたまらない。だけど、リキみすぎたのか、もう俺自身が全身気だるくて、どうにもこうにもできない。ただアルフィーの突きに翻弄されて、されるがままの状態だった。
「シン、私のものだ」
胸がきゅんとなる。
ああ、もう、好きにしてくれ。男の矜持なんか、もういい。
俺はお前のためにここに残ろうって、そう決めたんだから、体くらい安いものだろう……そう思えて……
「ああああぅ!」
痛みの中で揺すぶられているうちに意識がぼんやりしてそんなことを考えていたが、新しい衝撃が起きて現実を痛感した。
ケツにぶっといものが入っている。それがズンズン進んで深い部分まで質量を感じる。
げ。
男に組み伏されて、全部奪われた瞬間、俺はもうなにもかも、名実ともにアルフィーのものになったんだと思い知らされた。
あああ……星が飛んでいて、痛みは快感に変わっている。
こんなの、アリ?
……アリか。
第9章 まるっとあきらめて王子サマのものになりますよ 終
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