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第5話

     ***  新垣が寺の風鈴市へ誘ってくれた時、芳樹は飛びつくように返事をした。  子どものような反応をしたのが恥ずかしくて、しばらく新垣の顔をまともに見られなかった。  境内ではガラスや鉄、焼き物に炭、様々な素材や色の風鈴が真っ青な空の下輝いている。  風が吹くたびに、あちらこちらで競うように毛色の違う音を奏でた。  大人っぽい新垣と細身の芳樹は、歳の差ほど離れて見えない。  傍目には友達同士に映っているのだろうか。  ホッとする半面、二人の関係に気づいて欲しくもある。  勝手なものだと、芳樹は思った。  笑顔で話しかけてくる新垣に頷きながら歩いていると、足の親指に感じていた違和感が酷くなってきた。 「大丈夫?」  立ち止った新垣が心配そうに芳樹の顔を覗き込む。  いきなり近づいた顔に芳樹の心臓は音を立てて速くなる。 「ちょっと足の爪切りすぎただけだから」  きっと今日も抱かれるのだろうと考えながら、親指の爪を切っていたら深く切りすぎた。 「ならいいけど……」  視線を芳樹から移したが、新垣はなかなか歩き出さない。  目の前にある風鈴の屋台には、諏訪ガラス風鈴の看板がかかっていた。 「芳樹に似ている」  新垣は男の色香を含んだ笑顔を向けてきた。  白い曇りガラスに淡い桃色の花が浮き出た珍しい風鈴だ。  豆電球でも入れたら、もっと美しいだろう。  もともとの用途は、ランプだったのかもしれない。  新垣が屈んで芳樹の耳元に囁く。 「気持ちよさそうにしている芳樹みたいだ」  ただでさえ炎天下で火照った顔が、さらに熱を帯びる。  新垣は、芳樹が恥ずかしがるのを楽しんでいるふしがある。  からかうように笑った新垣の頭を、芳樹は背伸びして叩いた。  相変わらずへらへらと笑っている新垣が店の人に声をかけた。 「これください!」

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