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第6話
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「たかが風鈴に五千円かよ」
呆れている芳樹を無視するように、新垣は自分の部屋のベランダに風鈴を吊るす。
いつも会うのは芳樹の部屋で、新垣の部屋に来たのは初めてだった。
「いいんだ、記念だから。100万もする金の風鈴に比べれば安いもんでしょ」
「まあ確かに……」
嬉しそうな新垣の声に、芳樹の気持ちも温かくなる。
部屋に入っても、窓を開けたまま二人で飽くことなく風鈴を眺めていた。
この時ばかりは、リモコンの取り合いも休戦だ。
次第に強く吹き始めた風に、風鈴の音も絶え間なく鳴り続く。
「うるせえ!」
隣人の怒鳴り声が風鈴の音をかき消すように響いた。
「すみません!」
謝ると新垣は急いで風鈴を取り込み窓を閉めた。
芳樹に似ていると言った風鈴を、愛おしげに大きな掌に包み込んで新垣は見つめている。
そんな様子に芳樹はどうにも落ち着かない。
どちらからともなく、熱を吐き出すようにキスをし、なんども愛を確かめ合った。
新垣の寝息を聞きながら、短めの黒髪に触れる。
至福のあとに訪れる寂寞。
今日初めて太陽が見ている世界を二人で歩いたせいか、いつもとは違う満足感を芳樹は得た。
そんな思いとは裏腹に、新垣をこういう世界へ返さなくてはと考える。
新垣には、今日自分が感じた幸せをもっと味わってもらいたい。
新垣は太陽が輝く世界が良く似合う。
暗闇で互いの存在を見失わないようにしがみつき、狂おしいばかりに求め合う世界など彼には似合わない。
男同士の恋愛などしょせん疑似恋愛だ。
公衆の面前で、目を合わすのさえ躊躇われる。
なのに、新垣は人がいようと熱い眼差しで見つめてくる。
――俺には無理だ
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