6 / 7

第6話

     *** 「たかが風鈴に五千円かよ」  呆れている芳樹を無視するように、新垣は自分の部屋のベランダに風鈴を吊るす。  いつも会うのは芳樹の部屋で、新垣の部屋に来たのは初めてだった。 「いいんだ、記念だから。100万もする金の風鈴に比べれば安いもんでしょ」 「まあ確かに……」  嬉しそうな新垣の声に、芳樹の気持ちも温かくなる。  部屋に入っても、窓を開けたまま二人で飽くことなく風鈴を眺めていた。  この時ばかりは、リモコンの取り合いも休戦だ。  次第に強く吹き始めた風に、風鈴の音も絶え間なく鳴り続く。 「うるせえ!」  隣人の怒鳴り声が風鈴の音をかき消すように響いた。 「すみません!」  謝ると新垣は急いで風鈴を取り込み窓を閉めた。  芳樹に似ていると言った風鈴を、愛おしげに大きな掌に包み込んで新垣は見つめている。  そんな様子に芳樹はどうにも落ち着かない。  どちらからともなく、熱を吐き出すようにキスをし、なんども愛を確かめ合った。  新垣の寝息を聞きながら、短めの黒髪に触れる。  至福のあとに訪れる寂寞。  今日初めて太陽が見ている世界を二人で歩いたせいか、いつもとは違う満足感を芳樹は得た。  そんな思いとは裏腹に、新垣をこういう世界へ返さなくてはと考える。  新垣には、今日自分が感じた幸せをもっと味わってもらいたい。  新垣は太陽が輝く世界が良く似合う。  暗闇で互いの存在を見失わないようにしがみつき、狂おしいばかりに求め合う世界など彼には似合わない。  男同士の恋愛などしょせん疑似恋愛だ。  公衆の面前で、目を合わすのさえ躊躇われる。  なのに、新垣は人がいようと熱い眼差しで見つめてくる。 ――俺には無理だ

ともだちにシェアしよう!