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第26話 久々の再会。
「やっほ~!お久 ~っ!」
ニカっと笑みながら手を振ってきたのは、応接間にて待っていたーー
「ぎゃああぁぁぁっ!?リクハルド・カーマインっ!?」
俺は思わず指さして叫んでしまった。いや、ひとを指さしたら失礼だけども!
その人物は、リクハルド・カーマイン侯爵令息。例の婚約破棄パーティーでユッシと一緒におり、ユッシがロードナイト辺境伯家にて働けるよう推薦状を出してくれた家の、令息である。
「えぇ~、そんなに恐がられるとは思わなかったんだけど。しかも辺境伯夫人に」
いや、まぁそうかもだけど!?何故か俺はシュレヴィに抱き着いているし。
だけどシュレヴィは、
「あぁ、我が夫 はかわいらしいな。安心せよ。私が側についているのだから。そなたの敵となるものは、一瞬にして屠ってくれよう」
あぁ、なんて頼りになる旦那さま!後半の文言が恐いからぁっ!そして屠っちゃだめだから相手、侯爵令息とは言え、一応ユッシに便宜を図ってくれたんだよ!?
「えぇ~、辺境伯閣下こっわぁ~」
と、リクハルドがへらへらしながら告げる。恐がっているようには全く見えないけれど。
「それにユッシも久しぶりだね~」
リクハルドが手を振ったように、俺にはユッシが従者として付いて来てくれていた。
「ユッシは口づけしか許してくれなかったよね~!でも、今なら分かるよ~!そっちの首輪の君が本命~?」
ぐっはぁっ!!ちょまっ!?ユッシったら!下は許さずとも口はいったんかいっ!そして首輪の君とは、いつも通り首輪とリードを付けてユッシと共にやって来たイェレミアスである。
「なっ!ユッシ!俺以外に、口をっ」
イェレミアスが驚愕しながらユッシを見やる。
「俺にも、若い頃があったってことだ」
「ユッシっ!」
「だが今は、イェレ一筋なんだっ」
「当たり前だ!お前の口も、下の口も、もう誰にも渡さない!」
イェレミアスがユッシを情熱的に抱きしめて、更にはーー
「んむっ!?」
情熱的な口づけを、交わしたあぁぁ―――っっ!?
「いやぁ、ユッシが今も幸せそうで、ウチから推薦状出して良かった~」
リクハルドは相変わらずへらへらしていた。
「それにしても、どうしてリクハルドがここに?」
ユッシが首を傾げる。そう言えばそうなんだけど。
「えぇいっ!貴様はいつまでそんなことを言っている!」
次の瞬間、応接間のソファーから立ち上がり、リクハルドの肩を掴んだ人物に俺は思わず「げぇっ」と声を漏らした。
「えぇ~、いいじゃないですかぁ、殿下ぁ~」
リクハルドが呼んだ通り、それは俺が最も会いたくない人物、マティアス王太子殿下。俺に婚約破棄を告げ、セラフィーネを選んだ男。
まぁ、俺もマティアスに気持ちなんてなかったし、別にいいのだけど。今までの所業とかを考えるとどうにもね。
「いいわけあるか!このままでは、セラフィーネがっ!セラフィーネがぁっ!」
え、セラフィーネがどうかしたのか?
「落ち着け、マティアス!いきなりそんなことを!辺境伯閣下も困惑していらっしゃる」
続いて立ち上がりマティアスを止めたのは……。
「ねぇ、ユッシ。あれ誰?原作に登場する?」
「あぁ、あれはブラコン・ヴィリリアン・エメラルディス公爵令息。セラフィーネさまの兄上殿です」
えぇ―――っ!?聖獣の騎士でセラフィーネの兄!?
さらには……!
「……ブラコン?」
「えぇ。尤も原作にセラフィーネさまは出てこなかったので、この世界で得た情報です。リクハルドから聞いたことがあります」
まぁ、今も一緒に来ているし、高位貴族令息同士交流があるんだろう。因みに俺は全くなかったけど。
「ついでに奴は……」
ヴィリリアンにも何かあるのか!?
「私服がダサいです」
「私服が……?」
「えぇ。まともなセンスな使用人たちを押し切って、ダサい私服を通します」
「むしろ勇者やんけ」
「よく知ってるね」
その声に、ハッとして横を見れば。
「ぎゃぁ―――っ!?」
いつの間にかリクハルドが物凄く近くにいた。
何このひと!?ある意味このひとが一番恐くない!?
「カーマイン侯爵令息。我が夫 に近づきすぎだ」
「これはこれは失礼いたしました、閣下」
優雅に貴族の礼をするリクハルドだが、笑顔が胡散臭いわぁ~。
「それで、聖女セラフィーネがなんとか言っていたが、用件は何だ?せっかくリリヤが私の雄根をしゃぶってくれていたというのに。邪魔をするだけの用があったということだろう?」
『……』
その場にいた全員が、無言になった。
いや、イェレミアスはいつも通りぼけーっとしてるけど。
てか、大勢の前で堂々と俺がシュレヴィのしゃぶっていたこと打ち明けるのはどうなんだよっ!?
何このある意味羞恥プレイ~~っ!
「そ、それより、用件を聞こうよ!?」
ここは必殺、話題逸らし!
「そうだな。早く済ませてリリヤのをしゃぶりたい」
どうやらシュレヴィの脳内思考はどうやっても逸らせないらしい。
「さぁさぁ、ヴィリリアンさま、ご用件を仰られた方がよいのでは?」
しかしリクハルドのひと言で、ヴィリリアンがハッとして頷く。そしてマティアスを落ち着かせるように手で制し、シュレヴィに向き直る。
立場はマティアスの方が上だが、ヴィリリアンの方が年上だからかしっかりしているようだ。
「辺境伯閣下」
「何だ」
「どうかお力をお借りしたい」
「力、とは?」
「聖女セラフィーネと我々聖獣の騎士がアレキサンドライト辺境伯領へ派遣されたことはあなたもご存じのはずです」
まぁ、シュレヴィがそちらを推薦したんだもんね。
「そして我々はアレキサンドライト辺境伯領の討伐に参加しております」
因みにアレキサンドライト辺境伯領は北方の領地。こちらは西部だから、魔物の活性期にはこちらよりも少し遅れて入る。
既に活性期が落ち着いたこちらに対し、あちらは最盛期……つまりは一番戦闘が激化する時期のはず。
「それで?聖獣の騎士でもあるお前たちが2人も討伐を抜け、こちらに来たのはどうしてだ?」
そうだよね。アレキサンドライト辺境伯領も体制が整っているとはいえ、人外の力を操れる2人がこちらに来るだなんて。
4番目の聖獣の騎士が覚醒していないので、今アレキサンドライト辺境伯領にいるのはフェリックスだけのはずだ。
そして聖女のセラフィーネだけ。
「それはっ!我が弟、いえ聖女セラフィーネが魔竜の呪いに、倒れたからです」
えっ、セラフィーネが倒れた!?
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