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第28話 アレキサンドライト辺境領へ。
「では現地へは、転移で行こう」
「転移?」
シュレヴィはにっこにこ顔でそう告げた。
「空飛ぶ馬車じゃないの?」
「相手は魔竜だ。空を飛んでいけば狙われるだろう」
それは確かにな。
「魔王のあの転移、私も使えるんだ」
「うえぇっ!?じゃぁ、何で最初は馬車で!?」
「その方が、カッコいいかなと思ってな」
カッコよさ重視!?
「それに結構神経を使うのだ。リリヤのをしゃぶりたくて仕方がなかったあの時、使うと座標がずれてしまうと思った」
相変わらずの理由だな、オイ。
「それに今は緊急時だ。その方が早いだろう?」
「まぁ、そうかも。あれ、でもシュレヴィも行くの?」
「たまにはアレキサンドライト辺境伯にも挨拶しないとな」
「俺も兄上と行く」
そしてイェレミアスも声をあげる。
「イェレは、ユッシについてきたいだけだろう」
「うぐっ」
シュレヴィの言葉に、イェレミアスがびくんとする。あぁ、図星~~。
でも最近はずっと離れ離れだったんだ。ずっと一緒にいたいだなんて、―――萌える。
ぐふっ。
いや、そこはそこで。
「あぁ、そうだ。殿下とエメラルディス公爵令息は?」
「転移させてやるのも面倒くさい。そんな義理もないから、君たちは来た馬車で移動したまえ」
「そんなっ」
「閣下!それでは我々聖獣の騎士がアレキサンドライト辺境伯領への到着が遅れ、被害が大きくなるかもしれません!」
「なら、何故貴様らがここに来たのだ?アレキサンドライト辺境伯も許可した以上、その必要はないと判断したのだろう。それとも、王族の特権を使ったのか?」
「それはっ」
何だろう。マティアス、図星か?まぁ、愛しのセラフィーネのためだもんなぁ。そしてそれを許可はしたけれど、暴走しないように年長で親しい相手のヴィリリアンを付けたんだろうな。
元々派遣を予定していなかったアレキサンドライト辺境伯領だ。彼らがいなくとも維持できる状態だったのかもしれない。
魔竜に対する対策は、できていたのかどうかは分からないけれど。あちらはあちらで戦力になる人員くらいはそろっているんじゃないかな?
「では、我らは先に行く」
シュレヴィがニヤリとほくそ笑み、マティアスがギリギリと歯ぎしりをする。
「それじゃぁ~、俺たちも後で行くね~!」
ヴィリリアンに止められて悔しがっているマティアスを尻目に、相変わらず空気を読まないリクハルドの陽気な声が響いた。
「あ、シュレヴィ。シュレヴィもイェレミアスもついてきちゃったら、こっちは大丈夫?」
「問題はない。魔王がいるからな」
「あ、確かにそうか」
そして俺たちは、マティアスたちより一足お先にアレキサンドライト辺境伯領へと向かった。
***
―――アレキサンドライト辺境伯領。
『ギャッシャアアアアアァァァァァ―――――ッッ』
見えたのは、どでかい魔物の口の中だった。
「イヤアアアァァァァ――――ッッ!!?」
何あれ、いきなり魔物とか超ハードモード!?
「リリヤの蜜をしゃぶるのは、私だけの権利だ!」
シュレヴィがそう叫んだ瞬間、魔物が破裂して消えた。
その、助けてくれた中申し訳ないのだが、別にあの魔物は俺のをしゃぶろうとしたわけではないと思うけど!?
「大変です辺境伯閣下!リリヤさまの蜜を狙った魔物があんなにたくさん!」
「何だと!?」
そしてユッシも嘘でシュレヴィを煽るんじゃありません!!
「滅びろモブレは許さんんんんん――――――っっ!!」
うん、その精神は大切。受けの俺としても大変ありがたい。だからといって、俺の蜜のために極大魔法で巨大魔物を一瞬にして屠るのはどうなのかな!?
「さすがは兄上です」
「閣下のお陰で、リリヤさまの蜜が守られましたねっ!」
「うむ、そうだな」
イェレミアスとユッシの言葉に、シュレヴィが力強く頷く。
「リリヤの蜜は、私だけのものだ」
そんなキラッキラした目で言われても。
いや、別に俺の蜜はシュレヴィだけのものでいいけど!ほかのひとにやれと言ってもお断りだけども。
「リリヤの蜜は誰にも渡さん!」
『はい、閣下/兄上!』
何で一致団結してんのかなぁー、このひとら。ひとの蜜で何団結してんのぉ~?
「シュルヴェストゥル」
しかし何だかよく分からん展開になってきたところで響きのいいバリトンボイスが響く。そしてその声の方を振り向けば、藍色の髪にアイスブルーの瞳を持つガタイのいい男性が歩いてきたのだ。
そしてその周りには騎士と思われるものたちも呆然としながら俺たちを見ている。
「シュルヴェストゥル。助力は感謝しよう」
そう言えばこのひと、シュレヴィを呼び捨てにしている?
「お久しぶりです、辺境伯」
え、辺境伯?しかもシュレヴィが敬語だ。珍しい。……って、
「アレキサンドライト辺境伯ぅっ!?」
「うむ、そうだな」
「あ、閣下っ!!」
失礼があってはいけない。ちゃんと俺閣下つけたもんねっ!セーフ、セーフ。
「だが、いきなり何の用だ」
そりゃそうだよね!?突然現れたんだもん!辺境伯も何でって思うよね!?
「お陰で片付いたが」
「うむ。私のリリヤの蜜を狙ってきたからな。ついでだ」
ぬわ――――っっ!!!相っ変わらず何の遠慮もなく俺のシモジモの話をおおぉぉぉっっ!!
しかも相手はこの国のもうひとりの辺境伯ぅ――――っっ!!!
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