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第34話 シーズン3。
シェリルが目覚めるまで、シーズン3の話でもしておこうか。ユッシのノートによると、シーズン3とはーー
最後の騎士・シェリルを迎えに行く聖女ユッシ一行。
けれどクォーツィ公爵令息は庶子と言うことで虐められて育ったため、ツンケンしている。
彼との交流を進めるものの、進展はない。
その一方で倒したはずの魔王が復活し、王都を蹂躙する。
実はヴァルトは吸血鬼。魔物の血を引く混魔であり、魔王の血縁者であるイェレミアスを陰でそそのかしたのだ。
もう一度優しかった頃の兄を取り戻したいと願ったイェレミアスは、その身に魔王の魂を降ろす。
その強大な力にシェリルはひとりで立ち向かうが、本来支援役のシェリルひとりではなにもできない。身を呈して庇ったのは、シェリル以上に戦闘能力を何も持たないユッシであった。
そして駆けつけるほかの騎士たち。
騎士たちが協力し、ユッシの祈りの奇跡で、ヴァルトを倒し、魔王として復活したイェレミアスを殺し、消滅させることで世界に平和が戻る。
そしてユッシは王太子妃となった今も、イェレミアスの悲しい最期を思いだし涙するが、王太子や騎士たちに励まされ、前を向いて歩いていくことを改めて決める。
(呪)
――――――と、こう言う話である。
って、最後!最後(完)じゃないっ!
(呪)になってるぅ――――――っ!?
これはあれか、原作の都合ではなく、ユッシの最推しイェレミアスの消滅エンドへの、ユッシの並々ならぬ怨みぃっ!?
まぁ、普段の2人の首輪とリードで繋がれた絆も見ているからこのエンドはいたたまれない。
シーズン3については考えさせられるよなぁ。結果的にはシュレヴィもイェレミアスも生きているし、魔王も呑気で平和主義だ。
俺がシュレヴィに受け入れてもらえたことで、イェレミアスとユッシも出会えた。
そもそもは、マティアスがセラフィーネを選んだことが大きい。
それがなければみんなまとめて共倒れだったかもしれないし。
けれどそれはマティアスの功績と言うよりはセラフィーネの存在じゃないかなと思うのだ。マティアス……原作の強制力症候群に悩まされているし。
あれ、だとしたらマティアスはどうしてセラフィーネを選べたんだ?ユッシに目もくれず、セラフィーネだけを見つめていたはずなのに。
それはもしかしたらセラフィーネのお陰なのかもしれない。セラフィーネが側にいたから原作の強制力症候群から逃れられた。それなのに、今頃、何故。
あ、セラフィーネが呪いで倒れたから?呪いで一時的にセラフィーネの力が弱まったから、発動してしまった。
まだ、シーズン3が終了していないから、強制力が働いている?でも、そんなエンド嫌だし、そんな風になって欲しくない。シュレヴィにも、イェレミアスにも。
魔王にも今のままでヴァルトと一緒に幸せになってほしい。
「どうすれば原作の強制力から逃れられるんだろう」
ふと、呟いた。
「不安なのなら、ここをしゃぶり合うか」
ひっさびさのセリフがそれかいシュレヴィさああぁんっ!?股間押さえながら何言ってんのナニ言ってんのおぉぉっ!?
「あ、そうだ。結婚しちゃえばいいじゃん」
と、ユッシ。
「え?」
「原作の最後は、俺とマティアスの結婚式シーンで終わるので、俺がイェレと、マティアスがセラフィーネさまと結婚すれば、終わるかもしれません」
「相手は違うけどね」
「ユッシは渡さんっ!」
イェレミアスが渾身の表情でユッシを抱き締める。がはっ!その独占欲シュレヴィにそっくり。やっぱり兄弟だ。
ぎゅむっ
「ひゃうっ」
「ん、リリヤ」
シュレヴィもひっついてきたぁっ!!
うん、でもシュレヴィの腕の中は安心するからいいかも。
「あ、でもさ。セラフィーネたちの結婚はスケジュール決まってるから」
何せ、王太子夫夫の結婚式だ。
「じゃぁ、俺がイェレと先に結婚をっ!最推しと結婚をおぉっ!!」
ユッシの目がマジすぎて、ちょっと恐っ!いやかなり恐っ!!!
まぁそこまでイェレミアスが好きなんだなぁと言うのは、知ってるけどね。
「よいだろう!」
そして当主シュレヴィからの許可も出たぁ――――――っ!
「兄上っ!」
イェレミアスの顔がぱああぁっと輝く。
「これで解決だな」
と、シュレヴィ。
「うんっ!」
俺たちも笑顔で頷いた。
「いや、ひとの気絶中に何全部解決したみたいになってんですかっ!!」
あ、シェリルが起きた?
「あの、でも全部解決しちゃってさ」
今さらなんだけど。
「あ、そうだ。シェリルさまも転生者ですよね」
と、ユッシ。そういや、そんな話をしていたような、そんなような。
「そうだよ!お前と、リリヤもだなっ!?」
「あぁ、うん」
「それはそうと、私のリリヤを呼び捨てとはどういうことだ?」
あうっ、俺にくっつきつつおんぶお化け化しつつあるシュレヴィが不機嫌そうに低い声を出す。
「もしや、貴様、リリヤの蜜を狙っているのではあるまいなっ!!?」
『いや、んなわけあるかああぁいっ!!!』
あ、シェリルとツッコミが被った。
「す、すみません。取り乱しました」
しかしすぐに正気を取り戻し、ぺこりと頭を下げる。
「ふん、リリヤの蜜を狙っているのではないのなら、特別に許す」
そんなわけはきっとないだろうが、シュレヴィの機嫌がなおったので、ひとまずは良かったかなぁ~。
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