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第36話 原作の終了。あれ、何か忘れてるような。
そして、ユッシとイェレミアスは結婚した。
2人の結婚については、ロードナイト辺境伯シュレヴィと、トルマリン男爵も了承してくれた。
そしてマティアスとセラフィーネの協力もあり、陛下の許可も得た。これはマティアスのためでもあるのだから、早急に行われた。
さらにはマティアスとセラフィーネも。御披露目のための結婚式とパレードは予定どおりだけど、原作の強制力から逃れるために、戸籍上はセラフィーネと一足先に夫夫となった。
表面的にはこれは、公務の都合としてあるそうだ。
こうしてユッシもマティアスもそれぞれ結婚したことで、原作シナリオが終了したわけである。
「君たちにも面倒をかけたな」
王太子らしいキリッとしたマティアス。いや、むしろ俺の方が面倒かけてたけどね。
「いえ、俺の方こそ、今までいろいろと」
「そうだな。そなたも、変わったな」
「えぇ、まぁ」
顔合わせた途端魔力をぶっつけてないからな。今思えば、不敬罪にならなかったのが不思議である。いくら当時婚約者だったとはいえ。
「貴様、結婚したのだから、私のリリヤとしゃべるな見つめるな。あとリリヤの吐いた空気も吸うな!」
シュレヴィが隣からぎゅむーっと俺を抱き締める。前半2つはまだしも、最後のひとつは無茶振りやんけ。そして相変わらずな態度だよ。それがシュレヴィなんだけど!!
「わ、私だってセラフィーネの吐いた空気だけ吸っていたいっ!!」
因みにこれ、マティアスのセリフじゃない。
マティアスの隣に立っていたセラフィーネの背後からにょきっと出てきたヴィリリアンである。
いや、何で急に出てきたのぉっ!?
「やだ、お兄さまったら」
セラフィーネもさすがにひいてるよっ!?
あと背後で爆笑してるリクハルトはあれでいいのか。マティアスの側近、護衛騎士なのにいいのか。
周りの近衛騎士も止めやしない。彼らをチラッと見てみれば、これでいいのだとグッドサインをもらった。いや、なんっでやねんんんんんっ!!!
「それで、今はもうユッシを見ても大丈夫なんですよね」
気を取り直して、マティアスを見る。
シュレヴィはちょっと不満げだけどね。もう、くっついてるんだから少しは我慢してと視線を向ければ。
ちゅっ
えぇっ!?何故口づけをぉっ!?
「口づけをせがむだなんて、かわいいな、リリヤ」
何か俺がせがんだことになってるけどぉっ!?
「やだ、お2人ったら……っ!」
セラフィーネが頬を赤らめてるぅーっ!
「う、まぁ、話を元に戻すが」
マティアスナイス。話戻してくれたねっ!
「今は平気だ。だが、もしあの感覚が戻ったらと思うと、今でも不安なのだ」
まぁ、自分の心と別な気持ちが、強制的に発生してしまうんだもんね。
「ならば、技をかけてもらえばいい」
シュ、シュレヴィイイィィっ!?その案まだ生きてたのぉっ!?
「それで、ぶり返さないのなら、是非頼む」
マティアスも頼んじゃだめぇぇぇ――――――っ!いや、それでマティアスも原作の強制的から解放されるのならいいことなのかもだけど相手王太子!将来の王さまっ!
はっ!?まさか、とは思うけど。
王太子夫夫の結婚の手続きには、活性期を終えて報告に来ていたアレキサンドライト辺境伯も来てくれたのだ。
その時のアレキサンドライト辺境伯とシュレヴィの圧ぅっ!!
前にシュレヴィが国王陛下をおどしただのなんだの言いかけたアレもある!
こうして生まれるのか。王太子はあくまでもマティアスだけども。バカをやったら確実にダブル辺境伯に責められる構図はこうして生まれるのか。
いや、こう言う保険があるのはいいことかもしれないけどね。マティアスが間違った方向に行かないためにも!
原作の強制力症候群悪化した時も、ダブル辺境伯の抗議で国王夫夫も怒ってくれたみたいで、マティアスも反省してたもんね!
そして、マティアス直々のリクエストはーー
「おっけー」
リクハルトのかる~ぃGOサインで実現した。
「うらぁっ!!!」
「がっはあぁぁっ!!!」
ユッシは渾身のジャーマンをキメた。王太子にかけるにふさわしい、とても美しいジャーマンであった。いや、王太子にふさわしいジャーマンって何っ!!!
「うぉらっ、もういっちょぉっ!!」
行くんかあぃ――――――いっ!!!
「連続ジャーマン、羨ましい。じぇらっ」
イェレミアスはイェレミアスでどこに妬いてんのかな!?
「いいぞいいぞもっとやれーっ!」
リクハルトも何で煽ってんのっ!
「はあぁっ」
「ぐほっ」
ほらぁっ!煽るからユッシがマティアスに異世界限定跳躍ジャンピングキックキメちゃったよ――――っ!?
※※※
「あの、私もユッシさまのように、技をキメられるでしょうか」
セラフィーネは完全に伸びてしまったマティアスを魔法で治療しながら、ユッシに問いかける。いや、ちょっ、セラフィーネもやるの!?やりたいのアレっ!!
「あぁ、いいんじゃないですか?セラフィーネさまなら何かあった時でもすぐ治せますし」
そう言う問題か、ユッシっ!そりゃぁ、医療的なサポートは大切だと思うけども。
「では、私も何かあったら、ユッシさまに教わった技で、マティを支えていきますね」
え、えーと。
技で支えていくの?プロレス技で支えていくの?
「あぁ、フィーネ。私は今、とてもスッキリした気分だ」
目を覚ましたマティアスが、セラフィーネの愛称を呼びながら、晴れ渡る笑みでそう告げた。
「良かった、マティ。もしまた不安になったら、私に任せてね」
「あぁ、フィーネ!」
えと、マティアスもセラフィーネに技かけてもらう方向で納得したの?これでいいのか?2人がそれで納得してるなら、反対はしないけども!あくまでもセラフィーネはプロレス技かける側っ!?
――――――そしてセラフィーネは、プロレスにハマった。
しまった。
この世界に、プロレス聖女が2人も誕生してしまうことになるとは。
あれ、でもまだ、何か忘れているような気がするのだが、何だったっけ?
だがひとまず原作のエンディングは完遂したので、俺たち辺境組はロードナイト辺境伯領に戻ることにしたのだった。
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