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第37話 突然の訪問客。

「はぁ~、帰ってきたって感じでいいよね~」 のほ~ん。 ロードナイト辺境伯城のサロンでまったり寛ぐ俺とシュレヴィ。 因みにイェレミアスはサロンの多目的ゾーンでユッシに技をかけてもらっていた。 いや、何、多目的ゾーンって。 サロンだよ!? サロンなんだよここわぁっ!! 技をかけられるスペースがあるサロンって、何っ!!しかしそれがロードナイト辺境伯城なのである。 ――――そして、寛いでいれば唐突に魔王がやってきた。もちろんヴァルト付きで。 「おぅ、見つかったぞ」 「見つかったって、何が?もしくは誰か?」 「いや、決まってんだろ。お前の母ちゃんだ」 「あ、」 そう言えば、魔王に頼んでたんだった。 「母さん――――――っ!!!え、どこ!?どこにいたわけっ!?」 てかほんとに生きてた!? 「トルマリン男爵邸」 『え゛』 ユッシと声がかぶった。 トルマリン男爵領ではなく、『邸』の方なんっ!? いや、領の方でもくりびつだけどさっ! 「いや、何で?」 「バカンスっつってたぞ」 いや、何バカンスって。いや、バカンスを楽しむのは母さんの勝手だけどさ。 「念のため聞くけど、ユッシのお母さんと間違ってないよね?」 「いや、間違わねぇよ。2人並んでいたし」 しかも一緒に!?まぁ、男爵邸にいるならそうかもだけどさ。 男爵夫人だものね。客人をもてなしていたとしてもおかしくはない。 「一緒に腕を組んで庭散歩したり、スイーツ食べさせあっこしたり、添い寝してたりしてたぞ」 客人ってか、めちゃくちゃ満喫してるぅっ! てか、一緒に寝てんの!?添い寝してんの!? じゃぁ男爵その間ひとりっきりで寂しく寝てんじゃないの!? もはや普通の客人の寛ぎ方ではない。フリーダム。マジでフリーダムやんけうちのおかん。 「それに、あの気配はーー直接会ったら分かったわ。お前の母ちゃんの正体」 「え、俺の母さんの正体?」 人間でないことは確かである。しかし、一体何なのだろう? 「あれは、神の遣いだ」 「はいっ!?」 か、神の遣いいぃっ!? 「正確には、神が創造した獣。神獣だな」 「マジで?」 聖獣がいるのだから、神獣がいたとしてもおかしくはない。 聖獣の子孫だってその特徴を受け継ぎはするけれど、ヒト型なのだから、俺が神獣の子でもおかしくはない。 「ユッシ、こう言うの原作にあった?」 「いや、全然?」 原作にない、異世界ファンタジー独自あるあるーっ! 「魔王はその神獣ってのがどういう存在なのか知ってる?」 「それは直接本人に聞いた方がいい。一応、来てるぞ。こっちに」 「え?」 「『シナリオ』ってのが終わったし、お前らも帰ってきたから、会いに来たってさ。ユッシの母ちゃんと父ちゃんも一緒。突撃しようとした神獣を、さすがにシュレヴィに失礼だからと男爵が必死に止めてて、今応接間で待機してもらってる」 ぬおぉっ!! 「しかも神獣も俺と同じく転移で男爵夫夫連れてきちゃってさ、一瞬だったぜ」 母さんも転移使えたのぉーっ!? あれ、でも『シナリオ』って。 母さんも、原作のことを知っているのか? 神さまの遣いだもの。あり得ないことじゃないよね。 「私はかまわない。客人方を通してくれ。それに一度、リリヤのお母君にも挨拶をしたいと思っていたところだ」 シュレヴィが余裕の微笑みを見せる。 はぅあぁっ、さすがである。うむ!! そしてうちの母さんと、トルマリン男爵夫夫がサロンに通された。今日ユッシのお兄さんはお留守番らしい。そして急なと言うか急すぎる訪問に、トルマリン男爵がひたすら恐縮していた。 多分トルマリン男爵は、と言うか確実に悪くない。 うちの母がぶっ飛びすぎなのだ。我が母ながら、全くもう。 そして母はと言えば。 「はっああぁぁ――――――いっ!久しぶりねっ!リ~リヤちゃんっ!!」 いや、久しぶりってレベルじゃないだろっ!!しかもユッシのお母さんと腕組みながらきゃっきゃとしてるし! こっちはてっきりっ! ――――――まさか、本当に生きていたなんて。 「何で今までで連絡も寄越さなかったんだよ」 しかも、生きてるだなんて。 「見守ってはいたわよ?姿は見せなかったけどね。これは『シナリオ』を揺るがすことだし、過度な干渉はできないのよ。神からそう言われててねぇ~。でもシナリオにあった聖獣の涙なら大丈夫だったからあげたのっ!助かったでしょう?」 「そりゃぁねっ!?」 てか、やっぱり神とかシナリオとか言っちゃってるし! 「その、本当に神獣なの?」 「えぇ」 「神獣ってつまるところ、何なの?」 「もちろん神が創った獣。地上の秩序を守るための番人ね。でもその力はとてつもなく強大。私が手を貸してばかりでは、人間たちは自ら成長することを忘れてしまう。だから私の力をコピーして、4分割して4体の獣に与え、聖獣としたの。その力を受け継いだ子孫が聖獣の騎士ね。そう言えばひとり、受け継げなかった子がいたわね。シナリオ通りにしてたら聖獣に目覚めただろうけど、私のリリヤちゃんを犠牲にしたら絶対に許さなかったわ。陰ながら力が暴走しがちになるように乱してあげようと思ってたの」 まさかの、聖獣の始まりがそれか! そしてえげつないことたくらんでたっ!それは過度な干渉に当たらないのか!?そして私怨だしっ! 「でも、リリヤちゃんはちゃんと生きてる。リリヤちゃんが望むなら、聖獣の力を目覚めさせてあげてもいいけど」 「え、それなら、お願い」 オリヴェルには、今まででいろいろ迷惑をかけたし。先代とは違い、領地の建て直しにも力を入れているみたいだから。 「それじゃっ」 母さんがパチンと指を鳴らす。 「これでオッケ~」 ノリかっるぅっ!!つかそれでほんとにオリヴェルが聖獣の騎士になったの!? 「もうしっぽが生えたはずよ」 そ、そっかぁ~。確かサフィアス公爵家の場合は海蛇のような、鱗のあるしっぽだったはずだ。それなら王都は大騒ぎだろうけど、オリヴェルの今までの苦労が報われたんなら、いいかなぁ。

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