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③
「アイツ黙っちゃってさ…。そのまま電話を切られちった。」
以降…電話も繋がらなくなり、馬鹿みたく焦って。
電車乗って、ここまで必死で来てみたけど…
「アイツ、待ってるって…約束してくれたんだけどなぁ。」
現実は捨てられてた。
アイツはオレを、待ってなんかくれなかったんだ。
「アイツが就職決まったって言ってた頃から、すれ違ってんのかな~って。薄々わかってたけどね~…」
だから誤魔化すように、電話もメールも出来なくなってた。
話して、別れを切り出されんのが怖かったから…
「信じらんないよね~…アイツと付き合うまで、オレどうしょうもないくらいの遊び人でさ。振られるとか、マジ有り得なかったんだよ?」
他人を散々と弄んできた末に手に入れた幸せ。
アイツが教えてくれたのは、誰かを本気で好きになるってことだったのに…
「お前…」
「ざまあって、思ったっしょ?だよね~自業自得だもんね~…」
笑ってみせる雪緒は。
本当は…泣きたかったんだと思う。
俺の前では気丈に振る舞ってるけど…
その顔は、ちっとも笑っちゃいなかったからだ。
今日初めて会った、いきなり家に入れろとか…
迷惑極まりないヤツなのに。
その笑顔が痛々しくて、見てるのがスゲェ辛い。
だから、
「アイツも今頃、他の誰かとさ。クリスマスを────」
自嘲する雪緒の言葉を遮って、力いっぱい抱き締めてやる。
オレなんかじゃあ、気の利いたこととか…
格好いい台詞もなんにも思い付かないから。
ただ強く、ギュッと。
「ッ…!ちょ…いきなり、なんなの…」
ヘラヘラと返してみせる雪緒の声が、妙に上擦って耳を掠める。
抱き締めてやった、細く冷たくなった身体は。
小さく小さく震えていた。
「はぁ……なぁんかお兄さんてさ────」
アイツに似てるねって、
「はは、そりゃ微妙だな…」
「顔は断然アイツのが、イケてたけどね~!」
「…どうせ俺はクリスマスにぼっちな、イケてねぇ野郎だよ。」
「ウソウソっ、お兄さんチョ~優しいじゃん!」
見ず知らずのオレを見捨てず、家にあげたりしてさ。普通出来ないっしょ?
「…こんな時に優しくされちゃ、堪んないよ…。」
背中に回された腕で、ギュッと抱き返され。
何故だか胸の奥が熱くなる。
「ねねっ、おにーさん…」
「ん?」
返事して雪緒を見たら、チュッとリップ音がして。
「めりくり~」
「なッ…!?」
どうせならケーキ買って今からパーティーしようよ。誰もが羨むくらいうんと楽しいやつをさ。んで、
「なんなら、身体で慰め合っちゃう?」
「はあ…?」
クリスマスには良くあることじゃん?
「オレ、お兄さんになら捧げちゃってもいいけどな~?」
「え、それってどういう…」
大人なんだから解ってんでしょ?
「オレに言わせたいの?お兄さんてば、ヤラシ~!」
「ばっか、ちげぇよ!!」
兎にも角にも、まずはお祝いしましょ?
雪舞う聖なる夜に偶然巡り会い、
運命共同体となったふたりに乾杯して…
それから─────…
ね?
Merry Christmas♥️
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