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第4話 坂井と一緒に

「嫌だぁぁぁ!!」 胸まで沈んで俺は大声で叫ぶ。 俺の後ろで誰かのため息が聞こえた。 この声は坂井! 「坂井っ、坂井っ、そこにいるのか?! 助けてくれっ、頼む、もうイジメないからお願いだ。助けてくれ」 2つ目のため息をついて仕方なさそうに聞いてくる。 「本当にイジメないか?」 「イジメないっ、イジメないから助けてくれぇっ!!」 坂井の方を振り向くことも出来ず、助けてもらうために必死に手をバンザイしているのに手をとってくれない。 「早くっ………っ、………助け…ろ…、…バカッ!!!」 かなり沈んで口が魔法陣から出たり入ったりして言葉が跡切れ跡切れになりながら、坂井を急かした。 「………」 もう駄目かっ!! 俺の視界は眩しい青白い光だけになっていた。 息は出来るけど このままここに沈んでいくのが怖い。 恐怖に涙が止まらない。 頭上を見れば肘まで埋まっていて出ている手を必死に振り回し声を限りに叫んだ。 「おおーーーい。助けてくれ。坂井っっ!!」 ! スマホを引っ張る感触がする! 坂井が引っ張ってくれている。 スマホじゃ駄目だ。 ちゃんと手を握って引っ張ってくれ。 なんとか反対側の手で坂井の手首を掴むと坂井の腕が魔法陣の中に入ってきた。 魔法陣の色がピンクと青の(まだら)模様に光りだした。 それと同時に沈むスピードが急に早くなって一気に下に落ちる怖さに急いで坂井の腕にしがみついた。 助けに来てくれた坂井も俺と一緒に頭から魔法陣の中に落ちてしまった。 ピンク、青、紫の目がチカチカするような斑模様の魔法陣の中を坂井は冷静に観察している。 「これが異世界召喚か、思っていたより絵面がシンプルだけど この模様はセンスないなー」 たった一人で未知の世界に行くのは凄く怖くて坂井が一緒に来てくれたのが嬉しくて泣きながら礼を言った。 「ざがい゛~~っっ、だずげに゛来゛でぐれ゛であ゛り゛がど~~。ざがい゛~~っっ」 「手が痛いから、放してくれよ」 坂井は凄く冷たく俺の手を離そうとするから、必死に首を振って拒絶した。 「#$%&&%$$%~~(離したらお前と離れ離れになっちゃうかもしれないだろーーーっ!!)」 坂井の顔がキリリと引き締まった。 その目線の先に視線を落とすと下の方に別の魔法陣が見えてきた。 坂井がジタバタと体を動かして空中で体勢を入れ替え足を下にした。 俺の目の前に坂井の腰がきたからすかさず離れまいとそこにギュッとしがみついた。 「うわっ、キモチワルっ、汚いから、離れろよ」 「や゛だ~~っ」 また首をブンブン振って拒否した。 「まだつかないのかよー。早く地面に着いてくれ」 坂井がぼやいてからしばらくして足の裏に硬い物が触れる。地面だ! 「あ、足着いた」 ホッと一安心すると浮いていた体は急に重力を取り戻す。 「うわあっ、落ちるっ」 叫ぶ坂井を支えようと腕に力を込めた時、頭に凄い衝撃を受ける。 坂井じゃない何か硬いものが頭に……なん…だ?… そしてそのまま気を失ってしまった。

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