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第71話 火属性の魔物討伐 3日 誰が使役する

アリージャがテントの幕を開けると同時にフェリスと鉢合わせになった。 「危ないじゃないですか、どうかしたんですか」 「あの遅いからお手伝いに…」 「大丈夫です。掃除とベッドメイキング 全て終わりました」 微笑むフェリスの腕にはシーツにくるんだものを大事そうに姫抱っこで連れて来た。 「『スペシャルヒール』をバンテール様に使ってしまったので魔力がありません。身体がお辛いと思いますが治療は明日まで我慢して下さい」 そうシーツに話しかけて焚き火の傍に下ろすとシーツが小さく呻く。 予想通りシーツの中身は青い顔したガストー・サオマだった。 「よお、ガストー。昨夜は楽しかったか? ってか、さっきまでヤッてたんだよな? 随分気持ちよさそうに鳴いてたなー、お前」 ガストーは身体をぶるぶる震わせて涙に濡れた顔のまま俺を睨みつけてくる。 「おー、こわ。俺は後二人にヤラれるんだぜ。たった一人に抱かれたくらいでピーピー泣くなよ」 「神子様、あんな強い薬を飲ませてセプターが死んだらどうするつもりだったんだ。俺が身体を許してなかったらセプターは…セプターは…」 俺に向って文句を言ったあと言葉を詰まらせて 更にぼろぼろと涙をこぼしている。 「あー薬のこと文句言われてもなぁ、あれはセプターが悪いんだぜ。実はさー、セプターに薬盛るの今回で二度目なんだよ」 「二度目?!」 「一度目は普通の薬にしたんだけどアイツ薬に耐性があるらしくてな。全然薬が効かなくて逃げられたんだよ。だから今回は原液使うしかなかったんだ、ははは」 「原液!?なんて酷いことするんだ!!」 「酷い?セプターは我儘言って皆の命を危険に晒してるんだぞ。酷いのはどっちだ?お前もアイツが一人で戦って死ぬのはイヤだろう?なんたって身体を差し出すくらい大好きな親友なんだからな」 「………薬が切れてこの事が知れたら…セプターは絶対に協力しませんよ」 「はは、協力するさ。これがあるからな」 薬瓶を取り出してガストーの目の前でチラつかせた。 「薬瓶…また薬を飲ませるのかっ!」 「そうだ」 「そんな事しても無駄だ。見ただろう。あんな状態でどうやって討伐するんだ」 「これは別の薬だ。フェリス教えてやれよ」 「バンテール様が先程飲んでいたのは、惚れ薬と幻視薬の二つです。必要な儀式は済みましたので、これからは幻視薬のみを飲んでいただきます。これは飲ませた人物が最愛の人に見える薬なんです」 「最愛の人……リーフが…?」 シーツを握りしめる手の節を白くして悔しそうな顔でまた泣き出した。 「だから先程のように暴走して誰でも押し倒すということはありません」 「フェリスー、例えば俺がこれ飲ませて『俺のために一人で戦って死んで欲しい💗』とか言ったら簡単にいう事聞いてくれるのか?」 「はい、そうなります」 「そんなことさせないっ!! っああぁっ!!」 足腰砕けているガストーの鼻先に薬をみせると飛びかかってきた。 俺の手から払い落とされた薬瓶は地面に落ちて割れた。 「これでもう、薬は飲ませることが出来ないぞ」 「そうだな。これは駄目だが、まだあるから安心しろ。フェリス寄越せ」 「は?」 もう一本薬を取り出してガストーの前にまたチラつかせた。 「この薬は一日で効果が切れるんだ。たった一本割れたとしても予備は沢山ある」 「やめろっ、頼む、止めてくれ」 「ガストー、俺をゴミのように扱って抱いたこと、忘れていないからな。コケにしやがって」 「!! 申し訳ありません。お許しください神子様。セプターは俺とは関係ありません。罰なら俺が受けます」 泣きながら土下座するガストーを見下ろすのは気分がいい。 だが、まだまだだ! ガストーの頭を踏みつけた。 「許すわけ無いだろ、バーカ。だいたいお前も言ったじゃないか、セプターは薬が切れたら協力しないってな!!」 「うぐっ!」 「それならセプターを薬で使役するしかないだろう? それくらい理解出来ないのか」 「ぐぁっ!」 「そこでだ、ガストー。心優しい俺から提案があるんだが聞く気はあるか?」 ガストーの髪を掴んで持ち上げて幻視薬を目の前に見せる。 「この薬をお前が毎日同じ時間にセプターに飲ませろ」 ガストーの顔色が悪くなる。 そうだ、お前自身が薬を盛って親友を裏切れと命令しているんだからな。 「どうだ?」 「あ、や…」 ま、これも想定内。 「ふーん、じゃあいいや。フェリス、アリージャ、どっちでも良いセプターに薬を飲ませてやれ」 「「えっ!」」 打ち合わせのない話に二人は驚いて固まった。 「なんだよ。お前らも駄目か困ったな。仕方ない俺が飲ませるか、俺もセプターに纏わりつかれんのウザいから飲ますのやめちまうかもな。そしたら薬切れるのいつになるかなー、討伐中だったら笑えるな。戦闘不能になって殺されちゃったりして……くくく」 「!!!…待って下さい……俺がやります。俺にやらせて下さい」 はじめからそう言えばいいんだよ。手間かけさせやがって。 「ちゃんと責任持って飲ませられるのか」 「…はい、神子様お任せ下さい」 顔がニヤついて止まらない。 ムカつくこの二人が討伐の後どうなるか楽しみだ。

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