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第72話 火属性の魔物討伐 3日 リーフ ーガストー・サオマー

「セプター、起きろ」 「ん…………うっ、…何?」 セプターは顔をしかめて不機嫌そうに見上げる。 聞いていたとおり薬が切れかけると頭痛がしているらしい。 俺の顔を見ると心配かけまいと無理に笑顔を作る。 「薬と食事を持ってきた。先に薬を飲ませる」 「? いい自分で飲める」 「いいから口を開けろ」 俺が魔方陣を見せて飲ませなくちゃ意味がないんだ。 ひな鳥のように開けた口の中に幻視薬を注ぐ。 「んんんんんっ、はぁ、この薬は甘ったるくて苦いな。お前の作ったさっぱりとしたレモネードが飲みたいよ」  っ……リーフのレモネード………やはり、セプターには俺がリーフに見えるのか……… 「わ、我儘言うな。ここは魔物の生息地なんだぞ。そんな物あるわけ無いだろう!!」 「そんなに起こるなよ。悪かったって……チュッ💜……リーフ愛してる」 抱きしめて首筋に噛み付くようにキスするからゾクゾクして腰に来る。 「っ駄目だ、しないぞ。お前せいで身体が辛いんだ。今日の討伐は休みになったんだぞ」 「ふふ、リーフは誘い上手だな」 くるりと体制を入れ替えて俺はベッドに押し倒された。 「バカ! やめろ。明日の魔物討伐に行けなくなるじゃないか。魔法学園に戻るまで我慢しろ」 「リーフ、なんでお前が討伐に行かなくちゃいけないんだ。安全な場所でじっと待っていろ。魔物は俺達勇者が討伐してくる」 リーフ、リーフ、リーフ、口を開けばその名前ばかり!! お前の口から聞きたくないっ!! 「その名前………呼ぶな」 「あっ、すまない、そうだったな。でもどうして名前を呼んじゃ駄目なんだ?」 「どうしてもだ!!守れないならセプターの所にはもう戻らない。ここにも屋敷にも!!」 突き飛ばして出て行こうとしても上から抱き締められて身動きが取れず、セプターの下でジタバタもがく。 「放せっ!!」 「待ってくれ。俺が悪かった。リ…もう呼ばないから傍にいてくれ。頼む」 「痛いっ、放せっ」 「絶対に呼ばないから、どこにも行かないでくれ。俺のそばにいてくれ」 凄い力で必死に俺をベッドに縫い付ける。 「全然俺の言うことを聞いていないじゃないか。少しは俺の言うことを聞け!」 「聞くよ。だから…」 「それなら俺の上からどけっ!」 セプターは名残惜しそうに身体を放すと大人しく隣に腰掛けた。 「お前は昨夜から何も食べてないんだからまず飯を食え。倒れたらどうするんだ」 「リ…お前は食べたのか?」 「食べた」 しょんぼりしたセプターが命令通り、少し冷めてしまったスープを口に運ぶ。 「食べ終わったら少し眠れ、夕食になったら起こしてやる」 「傍にいてくれるか?」 「………ああ、眠るまで傍にいる」 セプターは嬉しそうな笑顔で俺を見つめる。 「ほら手が留守だぞ、早く食べろ」 頷いて食べ始めるがまた手が止まる。 「どうした?食べないのか?」 「………眠る前にキスしていいか?」 「!………わかったキスしよう」 食事が終わったセプターと、とろけるようなキスをした後、眠るまで傍で見守る。 幸せそうな寝顔をながめていると、なんで愛されるのが自分じゃないんだと涙が溢れる。 ほんの僅かな間でもリーフのふりをするのが凄く辛くて逃げ出したくなる。 だからと言ってこの場所をパーティーの誰かに譲るのも嫌だ。 「お前に愛されるのはこんなに幸せなんだな…」 セプターに愛される場所は誰にも渡さない。 今ここは俺だけのものだ。

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