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第105話 蹴られた
翌日、腹を見ると なんかまたデカくなった気がする。
手足は肉なんかついていないのに、腹だけがデカい。
マジで中年太りじゃねえか、食事を減らすか?
でも夕べ食事を減らしたら腹が減りすぎて眠れなくなって、結局夜食を用意してもらって満腹になるまで食べてから寝た。
昨夜は4食分食べたからこんなに腹が出たのかなー、食事を減らすのはやめよう。
一番いいのは運動なんだが、運動したくてもメイド達の監視があって庭園のランニングは禁止だしなー。
仕方ないベッドの上でストレッチと腹筋でもするか。
「いーちっ!にーいっ!さーんっ!」
「きゃあああっ!! 神子様おやめ下さい」
腹筋を始めたらメイドが慌てて止めに入った。
「よっと!大げさだな、大丈夫だよ」
「お腹にそんなことしてはいけません。御子様に触ります」
「ああ、大変だわ。急いで大魔道士様をお呼びして!!」
急いでエイプを呼びに行くメイドに呆れる。
ただ太っているだけなのに昨日から皆騒ぎすぎだ。
その時、腹をぽこんと変な振動がした。
なにこれ…何か変だ。
そしてもう一度ぽこんと俺の腹の中 何かが動いている!!!
「神子様、フリーレル様をお連れしました」
「うわあああああっ!!!!」
「神子様!!」
「エイプ、腹が変だ!!なんか入ってる。動いてるっ!!」
「……ハハ、大丈夫ですよ」
「全然大丈夫じゃない。腹が変なんだぞ」
エイプはメイド達に退室するよう指示して 二人きりになった。
嬉しそうに俺の腹をさすりながら囁く。
「元気に育っているようですね。私の子供」
「はぁ?私の子供って、お前何言ってんだ?」
「ずっと黙っていましたが ようやく話せる時が来ました。歴代の神子様同様に貴方も12人の勇者と夜を過ごしましたよね。討伐が終わった後、神子様にはまだ使命があるのです。勇者の子供を産むという大事な使命がね」
「は?」
「神子様がお産みになる御子の髪色で国王が決まるんです。あと数日で貴方は私の髪色と同じ御子を産み、母になおなりになられる。そして私はこの国の王になるのです。ははは、平民の私が王になるなんて、なんて素晴らしいんだ」
「何いってんだお前…頭おかしいぞ。どう考えても男の俺が子供を産めるわけ無いだろう」
「ふふふ、お忘れですか?ここに来たばかりの時に聖なる乙女の儀式をしたでしょう。アレは貴方の中に子宮を創る儀式です。神子様は男の身体でありながら、子宮を持ち子供を産める身体になったのです」
「なっ!!何してくれてんだよ!!! お前っ!!人の身体をなんだと思っているんだ!!」
エイプの顔を思い切り殴った。
「なにか勘違いをされていますが神子様として召喚されたのが貴方だったのですから、子供を産んでもらうためには神子様の体の中に子宮を作るしかないでしょう?愚かな勇者達は皆、私が神子様に仕えるのが当たり前と思っているから助かりました。まさか神子様の身体の中から自分達の子種を毎回掻き出されているなんて思いもしない馬鹿ばかり。私の子種を毎回入れなおしても誰も気が付かない。ははははは」
「ふざけるなっ!!!なんでそんな怖いことが出来るんだよっ!!この俺が子供を産む?そんなことあってたまるかっ!!この魔法を取り消せっ!!取り消せって言ってんだっ!!!」
子供を産まされる恐怖に怯え俺はめちゃくちゃにエイプを殴った。
「痛いですよ、神子様『癒しの露草』」
涼しい顔をして自分を治療するから余計ムカついてまた殴り掛かった。
「てめえ!!俺をなんだと思っているんだよっ!! 今すぐ俺を元の身体に戻せっ!!!早くしろぉぉぉっ!!」
「御子の命を奪う気ですか? そんなこと出来るわけないわけないでしょう。 怖いお母さまですね」
エイプは拳をするりとかわして後ろから俺の腹を撫でて話しかける。
ドン……
エイプの声に答えるように 腹の中がまた動く…本当にこの中にコイツの子供がいるのか?
「うわあああああっ、いやだぁぁっ、産みたくないっ!」
「落ち着いて下さい」
急いでドアに飛びつきノブを捻るが鍵がかかって開かない。
この俺が子供を産むなんて怖い事出来るわけがないっ!!
ドアを力の限り叩きまくって、人を呼んだ。
「誰か来てくれッ!!誰かっ!!俺 エイプの子供を産まされるっ!!」
「これはこれは、いけないお口ですね。私も御子が元気に育っているから つい嬉しくて色々と話してしまいました。神子様が余計なことを勇者達に言ったら困るので、これは仕方のないことなのですよ」
不気味な笑顔でエイプが近づいてくる。
「あ…あ…何する気だっ!!」
「『愛の奴隷』」
「やめろぉぉっ」
「『愛の奴隷』」
「やめっ…」
「『愛の奴隷』」
「………う………エイプ💗抱いてくれよ💗」
(いやだああああっ、やめろ)
「お腹の御子に触るので少しの間 我慢して下さい。この子が生まれたらいっぱい抱いて差し上げますよ。私の可愛い王妃💚」
「はい💗いっぱいして下さい💗私は王妃です💗」
(うわああああああああああああああああ)
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