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第107話 証拠隠滅 -ガストー・サオマ-

「ガストー…嘘…だよな?……俺は…今日屋敷に帰っ……」 絶望の色をした声と共に瞳から零れた涙がセプターの脚に落ちる。 セプターと神子様との間に子供が生まれた。 王に誰がなっても構わなかった。 それよりセプターに子供が出来たことがショックだった。 「御髪が薄紫色だと?! 嘘だ嘘だ嘘だ嘘だああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 「ふはっ!フリーレルまさか自分が王になると思っていたのか?」 今度はラリー殿下がフリーレル様をお笑いになる。 「そうだっ!! お前らの汚い子種を神子様の身体から掻き出し、私の子種を植えなおした。だから王は私以外ありえないはずなのにっっ!!!なぜだ!!なぜバンテールの子供なのだっ!!」 「フリーレル!!!!お前なんて卑怯なことをしていたんだ!!」 「酷いぞ!フリーレル様!!」 「うるさいっ!! 抱いたらそのまま放置していたくせに、お前達誰一人として神子様の世話をしたことないではないか。文句を言うなら自分で面倒を見れば良かったのだ」 「でーもー、結局はバンテール様に王の座を取られているじゃないですか」 意地悪そうにジュン・ローガックス様がフリーレル様を煽りニタニタ笑っている。 「はっ! そうか密契の儀を断っていたのはこの為だったのかバンテールっ!!!貴様、私が手出しできない討伐中に神子様を妊娠させたんだなっ!!」 フリーレル様がセプターの前に立ち、いきなり攻撃呪文を唱えた。 「ウインドカッター!!」 俺は急いで魔法が使えないセプターを『水の守護オートガード』の領域エリアに入らせ必死に攻撃呪文を唱える。 「アクアカッター!! アクアカッター!!」 風属性と水属性の三日月型のカッターがそれぞれかち合う。 大魔導士との魔力差を考えて倍にしたが、それでも属性の相性が悪く、相殺しきれずウインドカッターの軌道を逸らすだけで精いっぱい。 誰が見ても俺の方が分が悪い。それでもセプターを守るために戦ってやる。 皆一斉にフリーレル様から離れるように後ろに下がった。 「ここは危険です。御子を早く安全な場所へ!!」 視界の中にはいなかったがセプターの子供の避難を促した。 俺の言葉にフリーレル様が素早く反応する。 「はは!そうか証拠隠滅だ! 最初からやり直せば、私は王になれる」 血走った眼をランランと輝かせて分娩室に踵を返し御子を亡き者にしようと魔法を繰り出していった。 「誰かセプターを、新しい王を早く安全な場所に連れてってくれ。俺はフリーレル様と戦う」 近くの兵士に声をかけてセプターを預けると見送ることもなく俺も分娩室へ向かう。 「王こちらへ」 「ガストー!!ガストー!!ガストー!!」 背中越しに俺の名を呼ぶ声が遠ざかっていくことに安心した。 中に入ると室内は地獄のようになっていた。 ウインドカッターで切り刻まれた助産師や看護師で辺り一面真っ赤に染まっている。 「な、なにをしているんです。フ、フリーレル様」 幸いにもフリーレル様より先に分娩室の中にいたフェリス・オークト様のおかげで『水の守護オートガード』の領域エリアにいた神子様は無傷だ。 強大な魔力を持ってらっしゃるオークト様の『水の守護オートガード』はウインドカッターを全て撥ね退けていた。 「ははははは、これで証拠の御子はもういない。ははは、全部やり直しだ」 御子を亡き者にしたフリーレル様には神子様が映っていないらしい。 何が起こっているかわからないオークト様に向かって叫んだ。 「オークト様っ!! 神子様を連れて逃げて下さい。フリーレル様は普通じゃないっ!!」 「は、はい!!」 「邪魔をするなっ!! ウインドカッター!!」 俺に向けて攻撃魔法を放つ、急いで物陰に隠れて攻撃魔法を交わしても威力が強くて全て破壊されてしまう。 オークト様は神子様に肩を貸して立たせた。 「あん💗エイプぅ、俺 子供産んだよ。いっぱい抱いて💗」 「み、神子様」 フリーレル様に手を伸ばす神子様の様子は、酔っぱらったような様子と言動が明らかにおかしい。 その姿をまるで汚いものでも見るようにフリーレル様は睨みつける。 「………私の子供を産まないお前はいらない。新しい神子様を召喚する」

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