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第5話
「え、………何?……ウソ?」
そう言う燐は、俺の意外な(一斉一代の)告白に目を見開いて攻撃と疾走を止めた。
大草原のど真ん中でどこぞの青春馬鹿野郎擬きの若者を醸した俺は、呆然となっている燐に必死に追い付き、纏っていた長衣を燐の肩に引っかける。
が、燐の裸体を隠すことに必死だった俺は目的を果たした後にこう気づく。
あ、コクちゃった。
と。
そして、降伏目的でもあった発言に、今更のように動揺する。
「えっと、その………燐くん、今のはその………俺の本音と言うか、その………」
本心ですと素直に言えば、燐の顔が熱した鉄ヤカンのように真っ赤になっていた。
「やっ!!燐っ!!フリーズしないで!!」
恥ずかしいのは俺の方なんですがと叫んで、燐の両肩を掴んで揺さぶった。
余りの恥ずかしさに俺も動転して、ハチャメチャのことを言い出すし、やり始める。
「ほら、ボクサーパンツも洗って上げるよ」
そう言って、燐の手にある汚れたボクサーパンツを奪って近くにある泉で洗っているし、干しいる。
しかも、乾いたボクサーパンツを燐に見せながら、「ほら、綺麗になったよ♪」と言っても燐は硬直した儘だった。
キャパオーバーだったか?
素直に告白したのに、こうもフリーズされてしまったら、目も当てられない。
「ええっと、ええっと、燐くん~っ、いい加減帰って来て~」
戻って来た燐の反応が怖いけど、放置されるのはもっと怖い。
俺はゆっくりと燐に近づき、燐をぎゅっと抱き締めた。
「ゴメン、燐、ビックリしたよね?でも、俺が燐のことを恋愛対象で好きだってことはホントだから、俺と付き合って……」
そう燐の耳許で囁くと、燐の肩口が僅かにだけ動いた。
「………ゴメン、稜ちゃん、俺、ビックリして心臓壊れそうなんだけど………」
もう一回だけ言ってくれない?
俺のこと、好きって。
そう言う燐は俺の胸に片耳を押し付けた。
ドクドクと早打ちする心臓を燐に鷲掴みにされた感じで、俺は小さく頷く。
そして、一つ大きく息を吐き出すと、ゆっくりとこう言った。
「うん、イイよ。燐、俺はお前のことが好きだよ。誰がなんと言っても、燐が好き。燐のことが好き過ぎて、誰にも渡したくないんだ」
俺のモノになって、燐。
俺だけのモノに。
と。
俺は切に願うように、何度でもそう燐に言ってやった。
燐はその間ぎゅっと俺の腰に腕を廻して、何度も頷いていたが、
「………嬉しい、稜ちゃん……」
俺も稜ちゃんのことが好きだよと涙声でそう言って来た。
燐がそう言うのは、俺が絶対にそう言わないだろうと諦めていたからだろう。
燐は生真面目で、真っ直ぐで曲がったことが大っ嫌い。
そうだと言ったら、そう。
俺が「どうしたいかは、燐が決めて」そう言えば、燐が決めないとダメなのだ。
「フェイントはよくないけど、こう言うフェイントなら嬉しい。だから、稜ちゃん、ありがとう」
燐が嬉しそうにそう言って来るから、間違いない。
「うん、そうだね。じゃ、俺と付き合ってくれる?」
そう言えば、燐は頷いた。
「稜ちゃんがそうしたいって言うんなら、そうしたい」
と。
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