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第2-2話

「七日後の婚儀まで、お前が相手をすると聞いた」  婚儀、と、訳もなく口にしてしまえる彼に、苦い思いが込み上げる。まるで追い打ちをかけるよう。  これから肌を合わせようというのに、これではまともに顔もあわせられない。どうしてこうもしがらみが多いのか。    自然と下がっていくその顎を掴み上げて、清瀬の唇が、青の喉元に柔く吸い付いた。身体の芯まで蕩けるほどの甘い香りが胸に深く流れ込み、青は思わず腰が砕ける。咄嗟に抱き留める清瀬の逞しい身体に支えられて、耳の先まで熱くほてり出した。  微かに触れた彼の胸が、荒く鼓動を弾ませて脈を打っていた。彼は灯火を静かに吹き消し、腰を強く抱き寄せ、――と、分厚い舌が青の唇を舐め上げる。  皮が剥けた唇に、背筋がひりつくほどの痛みが走る。背を抱く力強さに青はますます汗を滲ませ、衣越しに伝わる掌の熱さには皮膚が焼けるようだった。  目が眩みながら、青は手を突っぱねようと試みた。 「ちょっと、まて……」  びくともしない身体に戸惑い顔を上げれば、彼もまた、青を前に激しているのだ。その興奮が伝播するようで、咄嗟に顔を背ける。 「か、花径という器がある。そこに、花が……」  青は言いよどむ。花径の奥に根を張る蕾みが、清瀬の手によって催花されたいと疼いている。しかし、淫らな自分の姿をさらけ出すのは矜持に関わる。  清瀬の腕に手をかけて、バクバクと激しく鼓膜を震わせる脈の音を意識すれば、心身はこわばり、気を失いそうなほどの緊張に青ざめる。 「やはり、後ろを向いて、いいと言うまで見るな。すぐに終わる。そうすれば今日は終い」 「水に濡らして、色よくするのだろ」  戸惑う青の手を、清瀬は簡単に絡げてしまう。  硯滴から滴る玉の粒が首筋を伝い、血管を辿るようにして全身がしっとりと濡れていく。その艶やかな身体は更に熱を発して水露を浮かべる。  啄む口づけは暖かく、朱に染まった唇は溶けだした。  清瀬の手が皮膚を掠めて脇や腹を触れていくたび、青のからだは力が入り、ひくりと跳ねる。流れるように腿を撫でる手が、下生えを掻き分け、陰部を伝っていく。その指先が花径の淵にふれると、じっとりと春の潮が満ちはじめるのを感じた。 「そこは、触るな」  清瀬の指を拒もうと、力を込める。すると、たっぷりと溢れたその液が、絡みつくような音を立てた。まるで色情を望むかのような音に、恥ずかしいと思うほど滴り落ちる。 「礼を、してくれるのではないのか?」  硯滴の口からしずくを指に絡め、背筋が反れるほど敏感なところを撫で上げた。  青の胸の先に角ぐむ乳頭は抱き合う衣にこすれ、花のような唇が吸われる度に、肌はさざ波立つ。  花の径の奥では固い蕾も暖かな水にだまされて、清瀬の手に心をほぐして開ききるのだ。花の径から、陶酔するような甘い香りがあふれだす。  ――ああ、なんとも簡単に開いてしまうのか。  部屋の中は霞が棚引くよう。その春景(しゅんけい)には頭もぼんやりと白くかすむ。  離れがたい思いに支配され、身体は過ぎゆく春を惜しむ。  しかし、青は振り絞るように声をだす。清瀬の腕を押しのけて後足を踏んだ。 「明日、またここへ。入液といって、俺の花径にあんたのものを射し込む。何もしなくていい。動くのは、俺がする」 「今、やめろというのか? 難しいことを」  青の水茎は清瀬の手に刺激されてたっぷりと湿り気を帯びていく。掻き立てられた性欲に、まずいと跳ね起きるように身体を起こし、青は彼の肩を掴んで押し戻す。 「だめだ、よせ!」

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