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第11-5話

「自分だけ望んでいたと思わないで。いったはず。欲には弱いと」 「それはギューに化けていたからだろう」 「なぜギューと関係がある」  清瀬の手が青の袴を力強い手つきで脱がした。開けた衣は水に揺れる。波の端が押し引きを繰り返し、水面に倒された青の敏感な肌を撫でた。胸の先を掠めるそのもどかしさに身を捩り、求めてしまった身体に思わず顔を赤らめる青の姿は、清瀬に激しい欲情を覚えさせる。  震える唇を舐め、若干とそそり立っている青の水茎を優しく手に握る。急き立てる手の動きに乱れ、陰部の中まで許した彼の、羞恥に燃える姿を目に含み、片手に彼の身体を抱き寄せた。  なだらかな乳房から滴る桃色の露を吸い、先をぷっくりと角ぐむ赤い芽の先をかすかに唇で挟む。肌をつつむ甘い乳香の香りと、気持ちよさそうに感じている彼の身体に清瀬の陰茎は熱を帯び、徐々に筋を走らせ硬くなっていく。  腕の中に収まる暖かな肉体は絹のようになめらかであった。つんと主張する蕾みを舌先で押しつけるように舐め上げれば、彼は甘く息を漏らし期待するように身体を預けた。  鼓動は荒く弾み、角の痣が熱く焼けるように疼く。目も眩むほどの色欲に猛り、抑えようもなく激しく噛みついた。青の身体は痛みに竦み、しかし忽ち四肢が震えるほどの快感を捉えて悶えだす。  解れ、濡れていく花径の口に脈打つ逞しい穂先を焦らすように掠め、青の身体が欲しいとねだるまで入れることはない。じっくりと撫でるように腰を動かしながら、背筋を引き攣らせる青の様子に吐息を漏らした。 「たまらない……」  甘い蜜を秘めたどんな花よりも蠱惑的で欲をそそる。  広がっていく快感をむさぼろうとする青に、我慢できないと、清瀬は勢いよく穂を突き立てる。 「……ん、ッ!」  注がれる気持ちよさを噛みしめるように、悦色(えっしょく)に火照った青の顔は明るく輝き、身を捩る身体は卑猥に動く。  清瀬は寸陰惜しむ間もなく激しく突き立てた。休むことなく繰り返される激しい動きは絶え間なく快感を刺激する。その気持ちよさに腰は自然と上がり、甘く喘ぎ続ける声は次第に泣き声のように苦しげに喉を引っ掻く。  悦楽を捉え、融けるほどの激情に達しようとして、その間際に清瀬は動きを止めた。激しくそそり立つ青の水茎は清水が磷磷(りんりん)と流れるように滴って、鱗毛(りんもう)はぐっしょりと湿っていた。  艶めく身体に熱い口づけの花を散らす。  青はじれったさに喉をならし、高められた身体の熱に吐息を弾ませた。淫らに身体を伸ばして清瀬を誘う。熱くて熱くてたまらなかった。どうにかしてこの熱を発散させたくて仕方がない。  敏感なところすべて、水気を帯びた彼の美しく輝く陰茎で、いいところをたっぷりと――。  清瀬はその思いを見抜いているのだ。  青の花径は清瀬の激しさを想像するだけで溢れるほどに滴る。  意識も理性もなにもかも、手放してしまいたいと思わせるほどの、あの恍惚感がわすれなれない。その欲求はまるで好色がましくて、色欲に耽った獣のようではないかと思うのだ。  清瀬の前ではこんなにもふしだらになってしまうというのに、とうの清瀬は青の要求に応えようとしない。  挙げ句に身体をもてあそび、破廉恥なほどの情感を掻き立てようとする。 「どうされたい? 青のしてほしいようにしてあげる」 「な、中を……」  さっきのように、もしくはそれ以上にと、強請ろうとする口は恥を思い出して塞がってしまう。  花径は激しい清瀬の肉欲の名残にひくついて、彼の逞しさが忘れられず、もどかしくてたまらない。それだけでは達せない。この上なく、想像もできないほどの快感を彼から得たいのだ。  身体を力なく持ち上げ、青は涙ぐんだ目で清瀬を睨んだ。 「して……」 「教えて、青」  耳を伝い、小さな頭を優しく支える清瀬の優しさに胸が詰まる思いであった。今はそんなことよりも、と、心臓が破裂するほどの強い欲求に涙が溢れる。 「おねがいだから、きよせ……」  真っ赤な唇をいじらしく結び、すねた素振りで噛みしめる顔に、清瀬は胸に落ちていく青への愛しさに息が震える。つがいあえるという喜びと、この手で淫楽(いんらく)を植え付けられるという幸福感。  歯がゆく昂ぶりをむさぼろうとする青の姿を目に焼き付ける。耐えしょうがないのは俺も同じことと、我慢ならず夢中で腰をつき動かした。まるで尾羽を震わせる鳥のよう。青の水茎は絶え間なく玉露を吐き零し、清瀬に興されてついに迎春の悦びに達し、銀の花を咲かせた。  身体の中に放たれた熱い精を感じながらうっとりと春を見つめる青の瞳をとらえる。享楽(きょうらく)に溺れさせ、彼をもっといやらしくさせたい。そして艶やかな身体を味わい尽くしたい。本能が求めるままに彼を。  濡れた花径に指を沿わせていく。ぐったりと横たえていた身体が跳ね起きた。 「まて、よせ……」  息を呑む青の唇を吸い上げて、清瀬は指を深く差し込んでいく。無理だと言いかけた青の花径は後から後から溢れて盛んに濡れ、じっとりと熱く、指でさえ強くくわえ込む。掻き立てられたいのだろうと、淫液を指に絡めながら、腰をくねらせる青に逃げる隙を与えず優しく擦り続けた。  「……っん、ぅ」  声をこらえて頭を振る彼は切ない顔に涙をこぼす。覚えてしまった快感の喜びに、身体は抗えずに開いていく。 「花径の奥で結んだ実の種を余すことなく舐め取りたい。そうすればいつでもお前の子だねを持っていられる。死んだら埋めて。俺の死肉からお前の花が咲くと思うと、たまらなく興奮する」  青はつま先を立てて清瀬の身体から逃れようとした。 「まだ、実は、ついてない……!」  震える身体は桃の花が咲き乱れたように美しく色づく。彼は唾を飲む余裕もないほど感じているらしい。蕩けた眼差しを伏せ、清瀬の腕に手をかけ前屈みに伏せかかる。顎から伝うその唾液の筋を、花蜜を吸うように、柔く唇に触れた。  ついにはこらえることができずに荒げた吐息の中から高い声を響かせて、喉の奥からどれほど気持ちがいいかと訴えるような嬌声を上げる。それを恥ずかしいとばかりに真っ赤になった顔を隠すのだから、清瀬は微笑を浮かべた。 「もっと、聞かせて。お前の放つ甘美な匂いに欲情している」  腕を取り上げ、忙しなく上下させる胸に口づけを落とした。 「ゆ、指を、離せ……」

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