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第10話 イケナイパジャマパーティー
「あ~~ら、いらっしゃぁいっ!今日は私たちと一緒にエッチなお・は・な・しっ、しましょうね?」
すとんっ。
――――――今、起こったことを解説しよう。
今夜は王妃であるお母さま主催のパジャマパーティーである。場所は国王陛下とお母さまの寝所にある寝室のひとつ。
お布団やふかふかソファーを敷き詰めた部屋にはぬいぐるみやお菓子、あとエッチな本が常備されている。
俺は日本の浴衣のような寝巻きを身に付け、シュイが持たせてきた黒蛇さん抱きぐるみを携えて参加した。ふかふかソファーに腰かける俺に対し、お母さまは……。
ベッドに横たわり、袷のある着物のような寝巻きを肩出しでせくし~に着こなして頬杖をついて妖艶に微笑んでいた。
因みに下半身は蛇体、たまにうねる蛇体の動きがまた艶かしい。
そしてそんなお母さまの妖艶なパジャマパーティー会場を訪れた者が、またひとり。確か俺と同時に召喚されたトゥキさんの運命の番だったはずだ。
染めているのにしては自然な発色のように見える金髪に、グレーの瞳。作務衣のような寝巻きを着ている。よし、まずは挨拶……と、思ったら。
彼はお母さまのことを一瞬凝視し、さっと襖を閉じてしまった。
パシィンッ
しかし、お母さまが間髪入れず蛇体のしっぽを伸ばし、華麗に襖を開け放ったあぁぁ――――っ!!!
「逃げるなんて酷いじゃな~い、さぁ、いらっしゃいなぁ~~~~~~っ??」
しゃ~~っ!!!
お母さまが舌なめずりをした途端、そんな蛇ならではの効果音が聞こえた気がした。
ひぃーっ!?つかお母さま!?それ完全に悪役ポジでは――っ!?
そしてトゥキさんの番くんは、お母さまの蛇体に巻き付かれて部屋に引きずりこまれた……。
いや、それ完全に敵役の動きでは!?
受けに許容される動きなのかな!?それっ!!
「うぐ……っ、てんめぇっ!?」
トゥキさんの番くんは苦々しい顔をしつつも、俺の隣に下ろされた。
「さ、楽しみましょっ!」
そう言うと、お母さまが再び襖を閉じてしまった。
「まずは自己紹介ねぇ。君には一度挨拶したっけ?冬眠明けにっ!」
そうだったんだ。
「あぁ、はい。茶会で」
そういや、守護者の番同士の集まりがあったんだっけ。それもお母さまが主催だったのかな。
「たといちゃんは召喚された時以来?」
「えぇ、まぁ」
「それじゃぁ早速紹介しないとねぇ。私のかわいい息子のたといちゃんよっ!」
お母さまがバッと飛び付いて、抱き締めてくる。
「え、いや、その。アンタ確か第1王子の番じゃなかったって」
やっぱり、みんな知ってるのかな。しゅんとなりつつも、お母さまがハイテンションでついついそちらに流されてしまう。
「私の息子の、第2王子シュイの運命の番なの!だから私の息子よ!」
「は」
ほら、完全についていけない風になってるぅっ!!
「あの、俺は蛇腹 縦です。たといでいいです。その、俺はえと、シュイの番、だったので」
「運命の番よ?もっと推していかなきゃ!」
お母さまが、シュイが知ったら嫉妬爆発しそうなくらい頬擦りしてくる。
「あ、うぅ、お母さまったら」
「んふふっ、よろしくねっ!アナタも名乗りなさいなっ!」
「……ふうん、俺は、芦屋 白兎。ハクトでいい」
ハクトくんは渋々といった感じで名乗ってくれた。その、そんなに悪い人じゃない、かも。
「さて、たくさんお話しましょうねぇ、エッチなお・は・な・しっ!」
やっぱりするのはエッチな話ですか――っ!!ほら、ハクトくんなんて瞼半開きだけど!?
「例えば獣人の受けちゃんの身体は種によって構造が随分と異なるの」
そう、なのか。まぁ、エロ本を渡されたことはあれど、詳しくは知らないし、少しはためになるのかも……。
「例えば蛇族はね、イチモツが2本でしょう?普段ヘミペニスは陰茎嚢ってところに閉まってるの!分かりやすく言えばち○こ袋!ち○こマジックホールっ!!!」
何か難しい生物学用語が途端に分かりやすくなったね!そしてエロくなったね!やっぱりエロ用語って分かりやすい覚えやすい万能用語なのかな!?但し18禁だけど!
「そしてね、蛇族の受けちゃんは、このマジカルち○こぽけっとのナカにっ」
またさらにエロくなってるよ!言う度にエロく進化してるよ蛇族のアソコ入れ~~っ!!
「おま○こがあるのっ!あ、攻めにはないのよっ?」
マジですかぁ――――っ!?それっていわゆるふたなりってやつでは!?それも特殊系ふたなりっ!お母さまは成獣人だけど!?
「は、一体どういう?」
ハクトくんがハテナ全開だよぉ――――――っ!!多分ふたなり、知らないんだっ!!
「気になるなら、見てみる?うっふふ、陛下にはナイショよ~~!私の秘部を見たって知ったら妬いちゃって目からビーム出しちゃうかもっ!んっふんっ」
いやいや、そんな危険を犯してまで~~っ!?しかも目からビームって何!?魔眼ですかお母さまっ!?ちょまっ、股間に手を伸ばさないでお母さま~~っ!!
――――――その、時だった。
「ゼフラさま、お待たせしました」
襖が開いた。その先には、黒髪に淡い紫の瞳の青年がいて……。
「わふー」
「ふかふかだ」
「あ、おーひさま!」
わ、わふぅっ!?和風ではない、わふわふだった。見事にわふわふだった。
え、ちびっ子?青年と一緒に入って来たのは3人のちびっ子だった。しかもみんな狼耳にわふわふしっぽぉっ!?
「わふわふ、する?」
俺の目の前に来て、わふわふしっぽを抱き締めて首を傾げたのは、5歳くらいの男の子で、灰緑の毛並みに薄紫の瞳をしていた。
「……い、いいのっ!?」
え、マジで!?初対面だけど、いいの!?人懐こいなこの子!!
「わふわふすれば、みんななかよち……!」
「うんっ!だよねぇ~~っ!」
あぁんかっわよ~~~っ!
頭なでなでしっぽわふわふ。
わぁっ、ふわもっふぁ~~っ!!何て素晴らしい毛並みっ!!
「いきなりごめんね、ウチの子が」
先程の青年がこちらに来て、わふわふっ子を抱っこで回収する。
「まま、わふわふ~~」
青年に抱っこされて手足をバタバタさせる様子も……かっわい~いっ!!てか、ままか。まま、なのか。この青年が、まま!やっぱりこの世界には男しかいない。そしてままもまた、男である!いや、お母さまもそうなのだけど。
「――――――う、産んだんですか?」
やはり、聞きたくなる。ここにいると言うことは、俺と同じ召喚者で、召喚とともに受けの身体になった人だ。
「はい。守護者ロウの番の丹玖狼 です。この子たちはロウとの子どもたち。よろしくね」
え?名前、よく聞き取れなかった。3人の子どもたちはやはり彼の子で、わふわふな見た目や俺にまっさきにわふわふさせてくれたちびっ子の髪の色でなんとなく察したけれど。
「あの、だ、だんじゅう……ろう……さん?」
いや、ちょっと違ったような。
「あぁ、地球からの召喚者には言いづらいのかな?ぼくの世界でも、名前を言いづらいひとはいるから気にしないで。ランでいいよ」
まぁ、ランさんなら何とか呼べるけど、地球からって?え、ランさんって……。
「ランさんは地球からの召喚者じゃないの?」
「ぼくは竜宮と言う世界から来たんだよ」
えぇ――っ!?じゃぁ竜人がいるって言う、こことも地球とも違う世界!?
「ランさんは竜人なんですか?」
「ぼくは残念ながら、竜人ではなく人狼」
え?人狼って、狼男ってこと!?
「満月になると狼になるんですか!?」
「完全に狼になるわけじゃなくて、耳としっぽが生えるだけかな。昔ほど血は濃くないから」
つーことは血が濃いと、完璧な狼男になるのか。
「てゆーか、中国語みたいな発音だな」
と、ハクトくん。え、そうなの!?
「君たちの世界ではその言語に近いの?ぼくの世界でも、同じ世界からでも言語が違うことがあるんだ」
「そうなんですか」
俺とハクトくんはたまたま同じ日本人だったってだけか。
「もうひとりの守護者の番ーー竜人の子とはこの世界の翻訳スキルで話はできるけど、母語はまったく別なんだ」
そんなこともあるんだ。まぁ、地球も広いし、過去には違う国からの召喚者もいたんだろうな。
「みみー」
あ、一番小さなわふわふっ子がランさんのパジャマの裾を引っ張っている。因みにランさんは中華風パジャマである。
「ごめんごめん、この子たちも紹介するね、まずは末っ子で5歳のミミ」
「わっふ!」
俺にわふわふさせてくれた子は、ミミくんか。
「長男で10歳のキュウ」
「キュウだよ!」
キュウくんは毛並みも瞳も灰緑でロウさんに似ている。
「次男で7歳のスウ」
「はーい!」
元気に手を挙げてくれたスウくんは、ランさんに似ている。それにしても召喚者の子は獣人の特徴を受け継ぐって聞いたけど、見事にみんな狼獣人である。
「ねぇねぇ、この本なぁに?」
キュウくんが手にとったのは――
「ぎゃーっ!!エロ本――――――っ!」
子どもたちが来るなら、隠さないとっ!
「あら、私が読み聞かせて……」
「いや、ダメでしょーお母さま――――――っ!!」
もちろんハクトくんと全て回収して、隣の部屋に撤去させてもらった。
「ひょっとして子ども連れ、いけなかった?パジャマでお泊まりって聞いたから」
「いいのよ~~、賑やかでいいじゃない。私も末っ子連れて来よっかなぁ」
と、お母さまがランさんと話しているのを聞いて……。
え、シュイって弟いんの!?衝撃を受けた俺であった。
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