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第11話 ちびちゃんず
「じゃ~んっ!ウチの末っ子のヒナよ~っ!」
わふわふ三兄弟が来てくれたので、エロパジャマパーティーは普通のお泊まりパーティーになった。そこでお母さまが末っ子ちゃんを連れてきてくれたのだが。
「ヒナ!」
その子は5歳くらいのちびっ子で、お母さま譲りの黒髪に陛下譲りの瑠璃色の瞳をしており、頭からは金色の竜角、背中からは竜の翼、お尻からは竜のしっぽが生えていた。
「え、遺伝しないんじゃ?」
シュイの尾は東洋風細長い竜の影響を受けているが、種として遺伝しないのではなかったか。――――――陛下と言う例外を除いて。
「ん~~、陛下との子だからかしら。でも、攻めとして生まれたのは陛下だけね。この子は、受けなの」
まぁ、竜人の受けなら召喚されてくるらしいしね。陛下の事例はほんとレア。レア中のレア。いやむしろ奇跡……?
「でも、かわいいことには変わりませんね」
まさかシュイに弟がいるとは。
「うふふ、ありがと!これから仲良くね」
「えぇ、もちろんです!」
頭をなでなでしてあげれば、ヒナちゃんがきゃっきゃっと喜ぶ。わぁかわゆす~~っ!
「ひなちゃ、あそぼ」
「う!ミミちゃん!」
わふわふっ子のミミくんとは、同い年だからか仲良しっぽい。お兄ちゃんたちに見守られながらじゃれだした。
「あれ、そう言えばもうひとりは……」
守護者の運命の番はもうひとりいたはずだ。もちろん竜欧院かさねではない。
「お待たせしました~、ウチの旦那が行きたくないってゴネてねぇ。さっき陛下に強制的に連行されたの」
ひぃーっ!?陛下自ら!?行きたくないってドンだけ鬼畜な会なんだっ!!
そして現れたのは、瑠璃色の髪にオレンジブラウンの瞳を持ち、縦襟で左に打ち合わせのある白いチュニックのような寝巻きを身に付けた清楚系美人だった。うわぁ、キレイ。溜め息が出そうなくらいキレイなひとだ。――――そして、
「ウイもあしょぶー」
きゃああぁぁっ!!なに、あの子!清楚系美人の影からめっちゃもっふぁな子出てきたぁ――――っ!
銀色の髪に狐耳、清楚系美人と同じオレンジブラウンの瞳、年齢は3歳くらいだろうか。
そしてさらには。
ふわっ、もふぁっ、もふぁさああぁっ
なにあのもふもふ狐しっぽぉ~っ!!何本あるんだ?1、2、3……全部で7本んんんっ!!
なにあの超絶もふいかわいい子はぁっ!!
「彼がたといくん?初めまして。銀狐のグイの番の九夕院 世麗那 。この子はウイ。あっ、結婚しているからもう、名字は違うけど。九夕院は旧姓ね」
「あ、そう言えばぼくも……癖でね」
そう言って美人と一緒にランさんも微笑む。
いや、その。清楚系美人の名前っ!ランさんとは違う感じだったけど別の意味で呪文みたいでよく分からなかったような!?
「セレナさんだよ」
察してくれたのか、ハクトくんがフォローしてくれた。
「せ、セレナさん」
「よろしくねぇ」
セレナさんが微笑む。優しそうな人だなぁ。
子どもたちがかわいくわっきゃしている間、俺たちはお菓子をつまみながらくつろいでいた。
「あの、セレナさんはりゅ、竜人なんですか?」
「うん、そうそう!」
やっぱり!でも見た目は人間と変わらないんだよなぁ。陛下と同じだ。
「で、セレナは竜角や尾、翼も出せるよね」
と、ランさん。
「うん、普段は面倒だからしまってるんだけど」
セレナさんはそう言うとヒナちゃんをみやる。
「子どものころはあっちの方が便利な不思議」
それでヒナちゃんは竜の特徴出してるのか。
「そういや、今回はあのあざといの、来ないんだな」
と、ハクトくん。ん?あざとい?
「あぁ、イル殿下の運命の番くん?イル殿下も殿下だよね」
ランさんが溜め息をつく。
あぁ、竜欧院かさねのことか。ここにいるみんなも全員知ってるんだよね。俺が偽物の運命の番だったって。
「まさか、シュイ殿下の運命の番を自分の運命の番と言って囲むだなんて」
でも、ランさんの口から出てきたのはイルや竜欧院かさねを擁護する言葉じゃなかった。
「王妃の前で言っていいのか、それ」
と、ハクトくん。
「別に、ランは旧知だもの」
お母さまが微笑む。え、そうだったの?
「うん、ぼくは20年前にこちらに召喚されたから、ゼフラとは付き合いもながいんだ」
「ロウも陛下の側近だもの」
確かに陛下の近くに控えていて、イルに対しても辛辣だったけど……そこまで陛下やお母さまと親しい仲だったってことなのか。
「私は4年前に召喚されたの。守護者も年齢が離れているからね。ロウさまとグイも、ウチの旦那も歳が離れてるんだ。守護者は必ずしも同じ年代に生まれるとは限らない。イル殿下とトゥキさまはたまたま年齢が近かったから召喚のタイミングも近かったのかもね」
そう、セレナさんが教えてくれる。守護者って結構年齢にバラツキがあるんだ。ひとり空席なのもその影響?
「あの、守護者ってどうやって生まれるんですか?」
「そうだなぁ、先代がいない時に生まれる場合、先代が生きている時に生まれ、成獣になったら自動的に役目を引き継ぐパターンとかがあるよ。ウチの国は守護者が5人だから途切れることはないけれど、他の国は守護者がひとりだからうまく継承できずに空席になることもある」
と、ランさん。そう言えば他国の話もチラッと聞いたことがあったかも。
「ま、私たちは、そんな守護者の運命の番として支えるために召喚されたのだけど……イル殿下のアレはないでしょ」
セレナさんまで。
「何か、おかしいと思ってたんだよ。あん時、強引にでも引き離してりゃぁ」
ハクトくんが渋い顔になる。
「やめといて良かったと思うよ。トゥキくんは武闘派じゃないから、イル殿下に睨まれたら動けない」
しかも虎と兎。勝負は目に見えている。
「なら、俺がっ」
えぇっ!?ハクトくん自ら!?
「ダメよ、守護者ってとっても強いの。効くのは、運命の番からの精神攻撃だけ」
セレナさんの言葉にハクトくんは苦虫を噛み潰したような表情で押し黙る。――――でもあの、セレナさんがその方法知ってる理由が気になるんだけど、仕掛けてないよね!?精神攻撃!!
「あと、陛下も強いけどね~~」
と、お母さま。まぁ、あの陛下はいろいろチートらしい。イルも最後は従っていたし。
「でも、みなさんどうして……俺は偽物の運命の番で」
「私たちは召喚された側よ?被害者だからに決まってるじゃない。それにあのシュイ殿下の運命の番だったんだもの。イル殿下のやったことはさらに責任が重いの。結果として、シュイ殿下の運命の番だったとしてもね」
セレナさんがすらすらと告げる。
「大丈夫よ、この子たちは。だから呼んだのよ」
と、お母さま。お母さまも、3人が俺の敵にはならないと踏んで、呼んでくれたのか。
「じゃぁ、王妃サマ的にはアイツはダメだってことか??」
と、ハクトくん。
「ふふ」
お母さまは答えないが、今この場にいないことが答えなのだろう。
「いや、むしろあの子、キャラ作ってない?あぁ言うタイプは徹底的にヤキ入れてやりたくなるんだけど」
え?セレナさん!?今何て!?
「この世界にバイクがあったら追い回してヤキいれてあげたのに、あぁ言う猫被りにはな」
いや、待て。バイクって何!?竜人の世界――竜宮にもバイクがらあるんだ~~……じゃなくて!ヤキってやっぱりええぇっ!?
「セレナちゃん、かるはるずみなことはダメ。ヤんなら、筋通さんと」
いや、ランさんはランさんで恐い顔して何いってんのぉ~~っ!?
「やべぇ、これから兄さんって呼んだほうがいいのか?」
それは何でだハクトくんっ!?
「ふーわふわー。ふっわふわにしてやるぞいっ!」
まぁ、でもウイくんが俺の腕にしっぽふわもっふぁ~~っ!!してくれたので、何か今までの全部どうでも良くなった。
――――――是非、ふっわふわにしてくださいいぃぃぃっ!!!
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