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第22話 からねからの手紙②
【Side:たとい】
「……ふぅん、そう言うこと」
ことの経緯を話してみれば、お母さまは興味深そうにかさねからの手紙を眺めていた。
「彼がどうして竜宮の文字を書けるのか。不思議よね。あ、でも陛下も地球の文字は読めるしスラスラ書くのよ?んーと、ヒラガナとかカンジとか言ってたかしら」
「えぇっ!?」
何故!?陛下――――いや、今はお父さまでもある。って日本語読み書きのできるの!?そう言えば、俺の名前も日本語の音に近くて。いや、そのものだった?
――――ってことは、この世界の陛下の言葉が聞き取れなくても、俺が日本語を叫べば、平気に届いたのだろうか。
でもまさか異世界の王さまが、全く違う言語話してんのに日本語通じるとか、普通は思わないよなぁ……?
それに王さまだ。今は義理の父となったにせよ、失礼なことをしたり、言ったりした場合。何も知らぬ異世界だ。どうなってしまうのか、何も分からない以上はなかなか。
かさねほどの図太さがなけりゃ無理だと思う。
でも今度、公の場以外で日本語で話しかけてみたら通じるだろうか。
「それにこれ、陛下が同じようなものを持ってるの見たわね。インクは朱色以外は使わないとか言ってたけど。自分で描いてるのも見たわね。ポーズは違うけど朱色の竜だった」
え、竜宮の文字まで描けるってどゆこと!?陛下ってチートすぎないっ!?
それに、朱色?
「朱色の文字だとしたら、昔の紅 夕院の土地の文字だと思う」
えっと、それって確か紅竜の土地だよね。紅色の竜がいたから、同じ赤系統の朱色を使うってことなのかも。
「じゃぁ、陛下に聞いてみましょ」
「え、いきなり大丈夫ですか?お忙しいんじゃ」
そう言えば、お母さまもお仕事は?俺はお茶の時間をとってもらってるから今は執務はないのだけど。
「大丈夫よっ!今日は落ち着いてるはずだから。あぁ、でもえちえちは夜でって言われちゃったの。それ以外の用事なら余程のことがなければ通るから」
そりゃぁそうです――――っ!!
いや、まぁ余程のことも、城の中の落ち着きっぷりから考えればないのだろうけど。
――――
お母さまが陛下にお伺いをたててくれて、俺たちは陛下の執務室へとお邪魔することになった。
むぎゅぅっ
「あの、シュイ?」
何故かシュイも来て、俺の背後に抱きついている。因みに現在は尾を縮めているらしく、3メートルほどだが、俺の脚や身体に巻き付けてくる。
「さっき母上にぎゅむーをとられた」
そこぉっ!?確かにさっき……って、その場にいなかったのに何で知ってんの!?
――――――そんなこんなで気を取り直して。
「この手紙か」
「そうなの。前に陛下が書いてた文字に似てるでしょう?」
陛下がかさねから来た手紙をじっと見ている。
「何故アレがこれを描けたのかは分からないが、母上からはこの手の文字は更に使う地域が狭まっていたと聞いている。これが紅 夕院か黒竜院の地の黒竜山脈の近くならもしくは」
その不思議な竜の絵の文字にも、地域差……つまりは方言があるってこと!?
「これの読み方は、竜の首の向きにそって、髭が当たっている胴の場所から読む」
読み方までそれぞれ違うの!?なんだか暗号みたいだ。いや、暗号なのだろう。ひっそりと、文字を、伝えたいことを後世に残すための知恵。
「――――これは、黒竜山脈の、麓?」
陛下が指で文字をなぞりながら呟く。それって陛下のお母君の、王太后さまの出身地と近いってこと?
「読めるかもしれないな」
「あら、さすがね。ステキよ、陛下ぁんっ!」
マジで!?それはありがたい!そしてお母さまと相変わらずラブラブ……!
――――――でも、一方でそうなったらかさねはどうして竜宮の、しかも一部のひとしか知らない文字が描けたのか。
セレナさん曰く、歴史の教科書に載っているくらい昔の文字らしいし。
それは陛下も、なのだが陛下は王太后さまに習ったんだよね?王太后さま世代ならギリギリ知っているってことなのか、今も受け継いでいるひとがいるのか、どちらかかな。陛下は確実に受け継いでいる方だし。
――――――それでも、地球人のかさねが異世界の竜宮の文字を知っているとか腑に落ちない。
それとも俺が知らないだけで地球と竜宮にも接点があったのかな?少なくとも地球には竜人なんて種族はいないのだけど。
あ、でも狼男伝説ならあるか。それでも伝説上の生き物だしなぁ。
ランさんも満月の日に二足歩行のもふもふ狼男になる訳じゃなくて、狼耳しっぽがでるだけのようだし。
「それじゃぁ、読むぞ」
うん、まずは手紙の内容だ!
――――竜宮の、三つの国。
竜人の国、人狼の国、鳳凰の国。
鳳凰の国、鳳王。
人狼の国、人狼王。
竜人の国、竜王は竜王院、四方の守護竜が地方を治める。
守護竜は黒竜 院、紅夕 院、白竜院、黄陽 院。
――――――黒竜院地、黒竜山脈は紅夕院との境界を分かつ。
黒竜山脈の麓、封印の地にて我らは封印の礎 となる。
その道には守護竜が付き従い、無事に礎となることを見守る。
そうして竜人の国は守護竜の元安寧を手に入れる。
生まれは黒竜山脈の麓の里、氏はなく、下等の竜鱗は錆色、髪は錆色、瞳は金、名はクレナイ。竜神に捧げられた年齢は10と2の冬。
同じく黒竜山脈の麓の里にて保護された、生まれは不明、物心ついた頃には里に入れられ、クレナイの両親亡き後はクレナイに育てられる。鱗は鈍 色、髪は鈍色、瞳は灰。名はクレナイに与えられたムラサキ。
竜神に捧げられた年齢はクレナイの三年後、10と2の冬。
盟主の黒竜院の名はシュアン、黒竜院の守護者の名はアギト。
これらの名と、土地の名に心当たりがあれば知りたい。
――竜欧院かさね
――――――
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