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第27話 ランとセレナ

【Side:ラン】 「不思議なものですね。でもこうして出会えたこと、とっても嬉しいです」 竜宮から、守護者グイの番として招かれたおしとやかな令息が微笑む。 「あ、いや、その。俺も仲良くできればいいなって思ってるよ。でも、いいの?俺は人狼だし」 人狼側からの竜人は分かるけれど、今の竜人の子ーーセレナちゃんは俺たちをどう思っているのだろう? 「それは過去の竜人と人狼の国の関係でしょうか?大丈夫です。今の竜人の子は、割りと人狼に憧れているんです」 「え、俺たちに?」 セレナちゃんと竜宮の暦を照合したところ、俺たちが竜宮で暮らしていた時代にそんなに違いはない。 この世界に来る召喚者は、どうも時間軸が一定ではないそうだ。とは言え竜宮からの召喚者は少ない。これは地球から来た召喚者たちの例から導きだされた事実だ。竜宮からの召喚者でも同じことが起きていると言ってもいい。 王太后さまとも話す機会があったが、王太后さまが竜宮で過ごした時代と、俺が過ごした時代には、実年齢の差以上の時間差があるのだから。 「私、国では学生時代、暴飛族(ぼうひぞく)に入っていたんです!そして総長として、竜人の国の族のトップにたったこともあるんです」 「え?あ、えーと、セレナちゃんって、代々議員を務める九夕院のご令息では?」 「えぇ、私も、若かったんです。親への、家への反発から、ついっ」 「そ、そう?」 「でも今はヤン卒はしていて」 まぁ、じゃなかったらここでおしとやかにお茶はしてないだろうな。 「知れば知るほど、暴飛族とは違うところも多いし、任侠道って奥が深いなって思っているんです!あぁ、こんなことなら人狼の国の読み書きも覚えておけば……っ」 まぁ、守護者の番の召喚者チートと言うやつで、母語が違う俺たちも会話できているが、読み書きは別だもんねぇ。 「なら、一緒に勉強してみる?」 「それは、是非っ!」 何だか、セレナちゃんとは仲良くやれそうだなぁ。 「そうだ、せっかくだしうちの子どもたちを連れてきてもいい?」 「ランさんの?えぇ、もちろんです!」 それなら、せっかくだし。俺は侍従に頼んでロウとの間に授かった子どもたちを連れてきてもらう。 6歳のキュウ、3歳のスウ、1歳になったばかりのミミ。3人とも狼耳しっぽのかわいい子どもたち。スウは毛並みは俺似、ミミの瞳も俺似だけど、ロウの獣人の血が濃く出て狼獣人として生まれてきた。 3人とも仲良し三兄弟。見てるだけでもかわいいんだよね~。 「に~ぃ」 「ミミ、こっちだよ」 「おててちゅなごっ」 2人のお兄ちゃんが大好きなミミと、そんなミミを中心におてて繋いでる長男のキュウと次男のスウ。 「わ、わふいっ!!かわいすぎる~~っ!!」 え、セレナちゃん!?いきなり椅子を倒して立ち上がって……。 「もふりたいっ!!」 え?いや、まぁ俺もロウをもふるのは好きだし、満月の夜はロウも俺のわふわふお耳としっぽをもふりたがる。最近は子どもたちに取られてしゅーんとしてるけども。 でも、子どもたちの毛繕いを夫夫でしてあげるのも楽しいんだよねぇ。人狼と獣人だから、お互いに毛繕いが好きなたちなのだと思っていたけれど。 ――――――あ、でも王妃さまは蛇族でもふもふはないけど、よくうちのコたちをもふりに来てくれるんだよね。 やはり、種族選ばずそう感じるのかな? 「もふってもいい?もふっても……っ!!」 セレナちゃん、目がマジだ。 「あの、あまり気合い入りすぎると、恐がっちゃうから」 「はうぅっ」 そのひと言に、セレナちゃんも落ち着きを取り戻したようだった。 「かわいいねぁ」 そして、3人の子どもたちとたわむれるセレナちゃん。 しかしその時だった。 「せ、セレナ!?私と言うものがありながら、何を!?」 それは、セレナの番である守護者のグイであった。グイは銀色の毛並みに瞳、狐耳と9本の狐しっぽを持つ美青年だ。 性格はーー地球から来た召喚者が持ち込んだ言葉によると『ツンデレ』と言うらしい。 あと、多分プライドが高い系。地球から来た召喚者によると、『これで受けじゃないなんて、何つー引っかけ!!』とのことだった。 よく分からないが、彼らが書き記したびーえると言う代物を読んでいたら、何となく分かった。因みに彼らはこちらの世界の言語で記しても出版してくれていたので、俺でも読むことができる。試しに地球の言語で書いてあるものを見てみたけど、諦めて本を閉じた。何だろう。こちらの文字は人狼の国と少し似ていたが、地球の、特にニホンと呼ばれる国の文字の使い手が多かったのだが、それはーー難解だった。 そして、こちらに9本のしっぽの毛を逆立てながらやって来たグイ。え、嫉妬?子どもに嫉妬したのこの獣人。 「こら、グイ。まだ話の途中だ」 グイと先ほどまで話をしていたロウがグイの肩を掴む。 「あと……ウチの子どもたちのわふわふに何か文句あるのか……っ!」 ひぃっ!?ロウが凄んでる。凄んでるよ、クールなロウには珍しく。 「ひっ!!」 そしてすぐさまビビるグイ。 何だろう、この残念な感じ。でもそこがまたいいのだと、地球からの召喚者は言っていた。いわゆる残念攻めらしい。 「んもぅ、グイったら。おちびちゃんたち恐がらせたら、もふじちにするから」 セレナちゃんの笑みっ!何だろう凄い迫力ある!? そしてもふじちって何!? しかしその瞬間、セレナちゃんの長い竜の尾が、しゅるりと伸びてグイの9本のしっぽをもふっと縛るように巻き付いた。 「うふっ」 「いや、そのっ!?や、やめっ!悪かったからっ!!ふ、普通にもふって、うぐっ」 何で泣きべそかいてんの、ほんとに。なんと言うか、かかあ天下だ。ウチは亭主関白だと思うけど。 「あ、そうだ!こちらでは子どもができると獣人の血が濃くなるのだっけ」 「そ、そうだが?」 もふじちを解放してもらったグイがきょとんと首をかしげる。 「子作り、しましょっ!」 「ぐはっ!?」 突然のセレナちゃんのデレセリフにグイが悶絶して崩れ落ちた。 いや、セレナちゃんはデレてはいない。これは確実に……。 「あの、もふっ」 「楽しみね、子作り」 「がはっ」 あ、完全にグイが伸びた。 「おい、グイ。全く。番として、陛下に謁見する時の竜人の番に関する注意はしっかりだな」 それは、先代白虎の番がやらかしたからだ。 「セレナちゃんなら大丈夫だよ、ロウ」 「そのお話ならお聞きました。今の竜人の国は未だに頭の固い連中はいるけれど、鱗で竜人を判断するなど、恥ずべきことです」 「ーーグイ以上に、しっかりしているな」 「うぐっ」 ロウの正直な見解。俺もそう思うけど、グイが今またダメージを受けたよ。 「あのきつねしゃんだいじょぶ?」 と、スイがグイを見ながら告げる。 「大丈夫、大丈夫。残念なところが逆に癖になるのよ。とっても面白いの」 何かセレナちゃんがドS!?けれどグイにはある意味合っているのかもしれない。 その後、セレナちゃんとグイの国王陛下夫夫との謁見は難なく終了し、王妃さまとはセレナちゃんも交えてお茶を楽しんだり、王太后さまとのお茶にセレナちゃんを招いて竜宮の話をすることもできた。 そしてセレナちゃんにもかわいい狐獣人の子どもが生まれ、ウチの子たちともとっても仲良しだ。 「紅鳶の守護者はまだ次代が生まれていないからアレだけど、残りの2人にもいつか俺たちみたいに番が来るんだよね」 「えぇ、楽しみね」 セレナちゃんとお茶をしながら、そう微笑み合った。 それがまさかあんな騒動を生むとは、思ってもみなかったけどね。

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