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第28話 ギョクとセレナ⑤
【Side:ギョク】
「……これは……」
「んふふ~んっ。たといちゃんが作ってくれたのよ。地球の……たといちゃんの故郷のスイーツなんですって……!美味しそうでしょ?」
「あいつこんな特技があったのか」
「そうなのよ~~。この間、厨房に入っていくところを偶然見かけてね~~!声をかけたら、シュイのために作ったんですって……!あぁん、かわいいわね……っ!愛夫 料理よ?萌えるわねっ!」
「おいおい……そりゃぁいいが……。あいつの愛夫料理をこんなところに……いいのか?シュイのやつが嫉妬するだろ」
少なくとも俺は……ゼフラがただ丸焼きにした肉でも誰かに食わせるのは……妬ける。
「これはシュイ公認よ~~!シュイも文句言ってたけど、ギョクが地球の食べ物好きだって言ったら、たといちゃんが是非お父さまにも食べてほしいって!あ、もちろん私にも……お母さまにも食べてほしいってかわいらしく言うんだもの~~!こう言うの、地球では萌えって言うんでしょ?」
も……萌えか……。多分地球のその手の話に関してはゼフラも地球からの召喚者からの読み物を読んでいるから詳しそうだ。
――――――しかし、俺がそれを好んでいるのは単なる……。
「つまりはたといちゃんの照れながらかわいくはにかむ姿に、もうシュイが陥落よ~~」
まぁ、それは分かるか……。
番のそんな姿見たらな……。ゼフラの場合は照れながらかわいく……エッチなことを囁いたりおねだりしてくるが……。別に嫌では……ないな。
「てことでこれ!美味しそうよね。一緒に食べましょっ!んふふっ」
そう言ってたといのお手製のスイーツに嬉しそうにゼフラが手を伸ばす。
「そう言えば、何と呼ぶのだったかしら……この……ぼ……ぼた……?」
「……え?お萩」
「あら、そんな名前だったかしら?」
「なら……うーん。……ぼた餅か?」
「そう、それ!でも……おはぎ……なの?」
「同じものだよ。季節によって呼び名が異なるが……暮らしている地域や人によって違うと言う方が納得できる」
「ふぅん……いろいろあるのねぇ……。でもギョクがおはぎって呼ぶなら、私もおはぎにするわ」
「いや、別にそれはゼフラの自由……」
「なら、ギョクと一緒がいいのっ!」
「……っ」
顔を寄せて美しく微笑んでくれるゼフラは……相変わらず愛おしくて仕方がない番だ。
「ほら、ギョク……!あーん、して?」
ゼフラがフォークでお萩をよそって差し出してくる。
「あむっ」
「んふっ、美味しぃ?作ったのはたといちゃんだけどっ♪」
でも……あーんしてくれんのはゼフラだからな。
「美味いよ」
たといが作ってくれた味もだが……ゼフラがこうしてあーんしてくれるのも……悪くはない。
「ほら、ゼフラ」
俺もお返しにフォークでよそってゼフラに差し出せば。
「あーむっ」
妖艶に口に含んで、蛇獣人ならではの長い舌で嘗めとるさまは……まるで誘っているような……。
「ん?ギョク?顔が赤いけど」
「いや、何でも……」
「あ……っ、もしかして硬くなってるかしら…?」
俺の股間にごく普通に手を伸ばすゼフラを咄嗟に止める。
「こら、まだこの後公務があるんだから」
そうでなくとも獣人は鼻が効くし、こんなところで本性をあらわにすれば大変なことになる。
「そんなギョクもかわいいっ」
いたずらっぽく微笑むゼフラは……。
「……からかうな」
「やだ、私は本気よ?」
「それはそれで……」
どうなんだ。
――――――だが。
愛しい番に愛の証を贈るくらいは……いいだろう……?
不意を付くようにゼフラに愛の証を贈り、そっと顔を離せば。
「……っ」
ゼフラが珍しく呆然としながらこちらを見つめていた。
「ゼフラ?」
「やだ……っ、んもぅっ」
そしてハッとしながら顔を背けるゼフラは……。
「かわいいな」
「あなたが誘ってくれるのも、好きよ?このままやっちゃいたいくらい」
「それは……夜だ」
「夜が楽しみね」
「まぁ……そりゃぁ」
竜とはいえ……いや、竜だからこそ、並みの獣人よりもずっと……。
番が狂おしいほどに愛おしくて、仕方がないのだから。
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