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第2話
姉はその人と結婚し、両親が残してくれた家に住む事になった。俺は大学生になった春、学校の近くで一人暮らしを始めた。姉は俺も一緒に住むつもりでいたらしい。それは流石に俺でも分かる。
新婚夫婦の邪魔をするはけにはいかない。俺は何かと理由を付け姉を説得した。義兄 に何か言われたらしい姉は、渋々だったが一人暮らしに承諾してくれた。お陰で違う意味で安心していた。これ以上、悩みを増やしたくたかったから……
学業と一人暮らしが始まり、慌ただしく過ぎていった。幸せに暮らしていた姉が病で倒れ、あっけなくこの世から去って逝った。俺の方が悩みで病んで先に死ぬ予定だったのに……
姉の死がきっかけで義兄に頻繁に会うようになった。義兄の憔悴しきっている姿が心配だったからだ。
辛そうだった顔が少し笑うようになったある日。義兄が突然、俺を抱き締め、唇が触れるだけのキスをした。
「ごめん、俺……何やってんだろ」
俺はもうここに来ない方がいいと思った。ある思いを重傷なぐらいに拗らせていたから。
俺はずっと義兄さんが好きだった。最初に会った時から……
分かってる……これは姉がいなくなって寂しいからだって事くらい。義兄はただ人の温もりが欲しかっただけだって。
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