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第3話
朝から天候があまりよくなかった。手に何かを持って歩くのが億劫だった俺は、傘を持たずに家を出た。
実家の最寄り駅に着くとやはり降っていた。暫くの間、雨足が弱まるのを待ってみたが一向に弱まる様子がない。近くのコンビニで傘を買い、並びにあるケーキ屋で足を止めた。
姉がここのフルーツタルトが好きだって言ったのを思い出した。色んなフルーツがたっぷり乗ったタルトと、濃厚レモンレアーチーズケーキを二個購入。商店街に続く歩道を走ってアーケードに入った。
湿った生暖かい空気に顔を顰め、流れる汗を手で拭った。商店街のアーケードが途切れたところで傘を差した。実家に帰るのは一年振りだ。去年は学業と就職活動で多忙だった為、姉の命日に帰省出来なかった。
姉さんきっと怒っているだろうな……それに……
余計な感情で心を掻き乱されたくなかった。会わなければ忘れると思っていたのに、その気持ちを鎮めるのに苦労するんだ。大事な時期に、何も手につかなくなってしまうのを避けたかった。
一目惚れから始まったこの思いは、今では肥大化し浅ましい感情の塊となってしまっている。告げたところで、十歳も離れた俺が言う事なんて軽く受け流されてしまうだけだ。血の繋がらない弟。それでもいい繋ぎ止めておきたかった。
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