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第5話

「相変わらず心配性だな……少しくらい大丈夫だって」 「普通だよ。義兄さんが無頓着過ぎるんだ」 「はいはい。それよりほら、汗凄いぞシャワー使うか?」  汗が流れる額に義兄の指先が触れた。その手を鬱陶しそうに避け、バスルームに向かおうとした俺の腕を義兄が掴んだ。 「なに……」 「それ、持って行くのか?」  さっき駅前で買ったケーキの紙袋を指さした。慌ててその紙袋を義兄さんに渡した。 「駅前のケーキ屋……姉さん好きだっただろ?」 「俺も好きだよ。綾乃はフルーツタルト、俺は濃厚レモンレアーチーズケーキ」 「ちゃんと買ったよ。義兄さんのも」 「おぉ! サンキュー。じゃ旨いコーヒー淹れとくよ」  この人は甘い物を食べなさそうなのに甘党で、酒強そうなのに弱い。人は見かけによらないな。 義兄が触れた額に手をやる。その手が微かに震えている自分に驚いた。  ただ触られただけじゃないか…… バスルームを出て居間に向かった。コーヒーの香りに混じり微かに線香の匂いがする。居間に入ると義兄が仏壇に手を合わせていた。俺も隣に正座し手を合わせた。  横にいる義兄を見ると目があって、誤魔化すようにもう一度手を合わせ目を瞑った。すると義兄が突然笑い出した。 「な、なに……?」 「俺のTシャツだとデカイな」 「……あんたを標準にしないでくれる? これでも百八十超えてんだから」  あんたが無駄に背が高いんだって!

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