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第6話
「義兄さんってもう呼ばないのか?」
「……っ! いいだろ早く食べようぜ。コーヒーが冷めちゃう」
「はいはい」
「義兄さん、なんか面白がってるだろ」
そういうとまた笑った義兄を肘で小突くと、逃げるように居間を出て行こうとして立ち止まった。
「大輔、縁側の戸開いてるから締めてエアコンつけといて」
「うん、分かった」
姉は一級建築士で義兄は後輩だったそうだ。姉は結構なやり手だったらしい。義兄は姉を尊敬していて、今も特別な人。
両親の家だったこの家は、水回りだけリノベーションされ後は昔のままだ。小さな庭と縁側がある古い家。姉はこの家をとても気に入っていた。
縁側の方で何かが当たる音が聞こえる。縁側の方を見るとガラスの風鈴がぶら下がっていた。赤い金魚が二匹、黒い金魚が一匹、金魚鉢をひっくり返えした様な形の風鈴だった。
よく見ると風鈴からぶら下がっている紙が風に煽られ紐が絡まっていた。それを直そうと手を伸ばした瞬間、風鈴の紐が切れ床に落ちた。俺は慌てて散らばったガラスの破片を拾った。
「痛っ!」
「大輔! どうした大丈夫か? 見せてみろ」
「いいよ! 大丈夫だから……」
義兄は俺の手を掴むとガラス片で切った指先を唇で食んだ。
え……?
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