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第8話
俺じゃダメなのか? 今でも姉さんが好きなの?
「ごめん。大輔、変な事言って…先に食べてて」
義兄は立ち上がりキッチンを出て行った。居間に戻ると、縁側で義兄が割れた風鈴を片付けていた。
用意された三人分のケーキを皿に盛り付けテーブルに並べた。俺はマグカップを取って座った。正直、義兄の事で気持ちが一杯だった。気持ちを切り替えようと、マグカップに口を付けコーヒーを啜った。
戻ってきた義兄は俺の斜め前に座り、マグカップを取って口を付けた。また泣いたのか目が赤い。
「冷めたな…淹れ直そうか?」
「いいよ……俺、猫舌だし」
「そっか」
フォークでケーキを掬い頬張った。濃厚なチーズと爽やかなレモンの風味が喉の奥に引っかかる。大好物のケーキが喉を通らない。俺は無理矢理飲み込んで、もう一口頬張った。
義兄は無言でケーキを口に運び、何か考えているのか口が止まる。
俺はそんな義兄を見ながら、ケーキをまた口に運ぶ。喉の奥につんと引っかかる何かと一緒に飲み込んだ。
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