8 / 16

第8話

俺じゃダメなのか? 今でも姉さんが好きなの? 「ごめん。大輔、変な事言って…先に食べてて」  義兄は立ち上がりキッチンを出て行った。居間に戻ると、縁側で義兄が割れた風鈴を片付けていた。 用意された三人分のケーキを皿に盛り付けテーブルに並べた。俺はマグカップを取って座った。正直、義兄の事で気持ちが一杯だった。気持ちを切り替えようと、マグカップに口を付けコーヒーを啜った。  戻ってきた義兄は俺の斜め前に座り、マグカップを取って口を付けた。また泣いたのか目が赤い。 「冷めたな…淹れ直そうか?」 「いいよ……俺、猫舌だし」 「そっか」  フォークでケーキを掬い頬張った。濃厚なチーズと爽やかなレモンの風味が喉の奥に引っかかる。大好物のケーキが喉を通らない。俺は無理矢理飲み込んで、もう一口頬張った。  義兄は無言でケーキを口に運び、何か考えているのか口が止まる。  俺はそんな義兄を見ながら、ケーキをまた口に運ぶ。喉の奥につんと引っかかる何かと一緒に飲み込んだ。

ともだちにシェアしよう!