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第13話
居間にある仏壇の前に義兄と座った。両親の遺影と姉の遺影が並んでいる。姉は俺と違っていつも笑っていて愛嬌がある人だった。
姉さんは花が好きだった。フラワーアレンジメントされた花が供えられていた。俺は線香を取って蝋燭の火を移し、手であおいで火を消した。煙る線香を香炉に立て、手を合わせた。
姉さんは、俺が義兄……翔也さんの事好きだって気付いてた?
「大輔と同じくらい翔也も大切なのだから幸せになって欲したいの」
じゃなんでいなくなったんだよ。置いていったんだよ。義兄はずっと姉さんの事思い続けているのに……
手を合わせて目を瞑る義兄を見た。姉さんに何話しているんだろう。少し笑っているように見えた。そして、ゆっくり目を開け立ち上がった。
「さて、祭りに行く準備するか。大輔ちょっとこっちおいで」
「ん? なに……?」
衣紋掛けに掛かった浴衣を渡された。それはとても綺麗な藍色の浴衣だった。
「これ着て」
「え!? どうやって着るの?」
「俺が着せてやるから」
義兄に言われるままに手渡された下着に着替えた。
「細いな。ちゃんと食ってるか?」
腰にタオルを巻き紐で腰に固定させながら義兄は言う。俺はこの状況が恥ずかしくて落ち着かない。下から見上げる義兄を睨んで、俺は顔を逸らした。
「食べてるよ。貧弱な体で悪かったな」
「そんな事言ってないだろ。本当、可愛くないな」
「男に可愛さなんていらないだろ」
「はいはい、そうですね。坊ちゃん」
「なっ!ばっ馬鹿にして!」
「こら、暴れるなって」
義兄は俺の腰に腕を回して白いの帯を巻き前で結んで引っ張る。結び目の部分を器用に作っていく義兄の手元をじっと見ていた。
「……なんで着付け出来んの?」
「粋な男性は着れるんだよ。なんてな……まぁ母親が着付けの先生やってるから自然とね」
「へ……」
帯を持ち後ろへ引っ張り、帯と浴衣を整えた。義兄は満足げに頷き微笑んだ。
「よし! 大輔に着せてやりたかったんだ。さっきの言葉は撤回する……」
「なにが?」
「可愛いよ、よく似合ってる。俺も着替えるから待ってて」
「……え、あ……うん」
頷いて俺は居間の方へ逃げた。緊張していた体から力が抜け、深いため息を吐いた。
俺、今どんな顔してんだろ……ただの冗談なんだから本気にするなって!
両頬をぱしっと手で叩き、自分を叱りつけた。
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