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第14話

 俺は横を歩く浴衣姿の義兄を見ていた。着慣れているのが憎い。黒に細かな白の縞柄の浴衣ときなりの帯が義兄によく似合っていた。十五分程歩くと河川敷が見えてくる。その辺りから屋台が出ていて賑わっていた。 「混んでるな」   「……うん」  人で混雑する中を義兄の後を歩く。慣れない下駄に足を取られ、転びそうになった。 「大丈夫か?」 「うん、平気」 「ほら手出して」  義兄の大きな手がしっかり俺の手を握りまた歩き始めた。 「義兄さん、恥ずかしいから」 「こんなに混んでんだ誰も見てないよ」  俺は誰かに見られてないか気になってずっとしたばかり見ていた。義兄は気にする事なく俺の手を引いて歩いた。 「どこ行くんだよ……」 「さぁ、どこでしょう」  人がこないだろう雑草が生い茂った所を迷いもなく義兄は入っていく。暫く歩くと生い茂っていた雑草が途切れ川縁に着いた。 「こんな所あったんだ」 「俺と綾乃の秘密の場所だ」  光の筋が上に夜空に向かって伸びていく。光の粒が円形に広がりキラキラと夜空に弾けた。音と共に花火が上がっていく。 「綺麗……俺に教えてよかったの? 姉さん怒るんじゃない?」 「……そうかもしれないな。でも、これからは俺と大輔の秘密の場所だ」 「え……」  また花火が上がった。赤や青が弾け次々、夜空に光が円形状に広がりストロボのように強い光を放って消えていく。 「なに?」 「いや……なんでもない」  どういう意味なんだ……  俺の手を義兄が強く握りしめた。驚いて隣にいる義兄を見たけれど、義兄は次々上がる花火に夢中だった。  ずっと一緒に見に来ようって事……?  強い光と共に弾ける。とても綺麗なのに夜空をキラキラ散っていく花火が切なく見えるのは俺だけなんだろうか。

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