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第4話※

   水音と荒い息の音が混ざって聞こえる。 「……っんぁ……なん、っ!」 「ココ、気持ち良いよな?」  今、俺は春日の住むアパートのベッドの上にいる。  しかも家主に足を開き、後ろを弄られて喘いでいた。    こんなはずでは、なかったのだが。      店で眠りに落ちた彼は、声をかけても揺さぶっても起きなかった。仕方なく、いや、正直に言うと少しの下心があったのだが。とにかく、タクシーを呼んで帰らせた方がいいだろうと当然なる。  通常ならばそれでお終いだ。    だが、これはまたと無い機会だった。  これを逃したら、おそらくずっと店員と客だ。  カウンターを越えることは不可能になるだろう。  築き上げた関係が崩れるなどと言ってはいられない。  このまま送り狼になってしまおう。    最悪最低の考えであることに自覚があった。しかしどうしても我慢ができない。  俺は客足が少ないことを理由に先に帰りたい旨を木下に伝える。 「仕方ないな~今度、何か奢ってくださよ!」  事情を知っている気のいい後輩はあっさりと受け入れて手を振った。 「せっかくだからキめてこいよー!」  俺と春日の会話を肴に、長居して呑んでいた清水も、ニヤケ顔で見送ってきた。    灰色の外壁のアパートは、まだ綺麗で新しそうだった。タクシーでそこに降りた時、俺は半分寝ている春日に確認をする。 「一人で歩けるか?」  と。  しかし、答えはノーだった。肩を抱いて支える俺を申し訳なさそうに揺れる瞳が見てくる。 「甘えて、ごめんな……」 (いやここで歩けるって離れられたら、俺も困るから)  考えていることが口に出ないように努めながら部屋番号を確認して連れて行く。  踏み入れたワンルームの室内はベッドのシーツがよれてしまっているものの、男の一人暮らしで想像する部屋よりも整っていた。  俺は春日の背をベッドに寄りかからせ、スーツを脱がせる。 「ん、ありがとう……からだ、あついから、たすかる……」  アルコールの影響で潤んだ瞳に赤い顔、そしてふわふわとした話し方。  その状態で無防備にネクタイに指をかけて緩める姿を見て、もう我慢の限界だった。 「ボタン、外してやるよ」 「へ……? 、ん……っ」  酔いのせいでうまくボタンを摘めない手を握り、唇を合わせる。  ここまでは、ほぼ計画通りと言えよう。  全く抵抗がなく心配になるほど、口付けはスムーズに行えた。舌で合わせ目を撫でると薄く開いて招かれる。熱い口内の舌を絡め合った。  脳を痺れさせるような快感に、更に深く求めにいく。  こういった行為に慣れているのだろう。シャツのボタンに手を掛けると、脱がしやすいように体と体に隙間を開けてくる。はだけさせた鎖骨へと唇を這わせた。 「ん……!」  眉根を寄せ、ピクリと逞しい身体が跳ねる。 (かわいい……!)    と、思っていたところまでは良かった。  その後、互いに服を脱ぎ体温を重ねて盛り上がったところでベッドに二人で上がる流れになった。 「まさか、小金澤さんに誘われるなんて」  それまでされるがままに俺に合わせていた春日に、恍惚とした表情で押し倒された。  酒が入っているとは思えないほどに強い力だった。  

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