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★第9話 早坂の答え

ホテルの部屋に入ると、すぐに望月は早坂の首の後ろに手を回し、キスをした。 望月は、まるで子どもがおもちゃをしゃぶるように早坂の唇を弄んだ。 望月の熱く荒い吐息が興奮を誘う。 5年前のキスとなんら変わらない。 まるであの時の続きのようだ。 シャツのボタンが外され、首元を望月の舌が這う。 望月の細く麗しい指先で、ズボンの上からそっと撫でられ、すでに体の準備はできてしまっていることがばれてしまう。 望月が、早坂のベルトに手をかけた。 「望月さん、せめてベッドで……」と言うと、望月はちょっと笑ってキスで答えた。 望月は早坂のスーツを脱がそうとしたが、早坂は「自分で脱ぎます」と言って脱ぎ始めた。 なんとなく、自分がまだ年上で、男であるとギリギリ思いたかったんだろう。 少しもたついていると、望月はさっさと脱いで、脱いでいる最中の早坂の首筋の後ろにキスをし始めた。 望月は後ろから腕を回し、早坂の乳首に優しく触れる。 今まで乳首で感じることなんて無かったのに、この非常事態でおかしくなってしまったのだろうか。 服を脱ぎ、ベッドに横たわると望月がのしかかってきてキスをした。 小さな顔。 ほどよくついた筋肉。 キレイな肌。 互いの肌が吸い付くように馴染む。 時々、望月の乱れた髪の隙間から表情が見えるが、見つめ合うことはなく、すぐキスをする。 二匹の獣が、快楽を求め、与えるだけの交わりだ。 ひとしきり互いの体を愛撫し終えると、望月は早坂の下半身を舐め始めた。 「あ……っ」 声が出てしまった。 子どもができてから、あまり妻とはセックスをしていない。 まして、妻はフェラをしてくれない。 だからと言って、別に不満はない。 夫婦の絆はセックスだけじゃない。 だが、今こうして快感が押し寄せてきて、自分の情けない声を自分で聞いてしまうと、そんなキレイごとは吹っ飛んだ。 さっきまでの力づくとは違い、望月は繊細に早坂の先っぽにキスし、舐める。 不思議な景色だった。 早坂は無意識に望月の頭をなでた。 愛しいというか、可愛いというか。 なぜそんな気持ちになるのかわからない。 早坂の中の”常識”が壊れていくのと同時に、望月の欲情に溺れたい欲求が湧き上がってくる。 それでもまだ、高まる衝動を抑えようとしたが、望月の口と手はどんどん激しくなる。 「あっ! もう……!」 イク寸前で望月は手を止めた。 「じゃあ、そろそろ交代しましょうか」 早坂はバッグの中からコンドームとローションを取り出した。 「入れてくれますか? やってみれば、女とやるのと大して変わりませんよ」 そう言って、望月は四つん這いになる。 望月のキレイな背中を一撫でし、挑発的な尻を掴んで、言われたように挿入していく。 「んっ……あっ……」 出し入れするのに合わせて、望月の苦悶とも快楽ともつかない喘ぎ声が部屋に響く。 最初は早坂も恐る恐る動かしていたが、望月の艶やかな声に遠慮がなくなっていった。 「あっ……!あっ……あぁ……!」 あの望月が、そんな声を出すなんて。 もっと聞きたい。 もっと乱れた望月を見たい。 早坂は望月を無理矢理仰向けにした。 望月は息を切らしながらも、まだ涼やかな表情だ。 望月のそれをしごくと、望月は快感に耐えるように顔をゆがませた。 高まってきたところで、望月の足を開かせ、一気に深く突いた。 「っ!ああっ……!」 望月は腰をのけ反らせ、顎をあげた。 「あっあぁっ……!」 望月の上気した顔がたまらなかった。 濡れた音とベッドの軋む音、望月の喘ぎ声。 望月は自分のをしごいてイッた。 望月の今のあられもない姿を見て、早坂も果てた。 行為中、二人は一度も目を合わせなかった。 早坂は、息を切らせながら横を向いている望月の髪を、静かに払った。 そこには、少年がいた。 母親のどす黒い愛情を背負った細い肩。 父親に頼れない心細さに耐えた浮き出た背骨。 男になり切れない細い腰。 何を見ているのか、何を考えているのかわからない横顔。 俺はまだ、望月のことを何も知らない……。 そんな言葉が頭に浮かんだ。

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