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第12話 進藤の彼女

翌日も終業後の会議室で勉強会をした。 進捗を確認すると、自主学習と決めた範囲に少しだけやり残しがある。 仕事ではないから見逃すこともできるのだが、望月は長年の営業指導の勘で”決めたことをやり切れない”営業マンは成績が悪いことが多いと知っていた。 そこで進藤につっこんでみた。 「このあたり、やりきれなかったみたいですけど、どうしたんですか?」 「あの……お恥ずかしながら、私は彼女と同棲中でして、ちょっと時間が取れなかったのです」 望月は、女が男の仕事の足を引っ張るパターンが大嫌いだった。 仕事の調子が上がらない理由が、不仲や家庭サービスだとイライラする。 それほど女が大事ならば、もっと楽な仕事を選べばいいのに。 その女にかまけている時間に、仕事をフォローしている人がいるのだ。 そこに無自覚な男を、さらに女が無自覚に支配している構図には反吐が出る。 この価値観をそのまま進藤にぶつけたいわけではないが、彼女の存在は懸念事項になった。 「彼女はどんなお仕事を?」 「レストランで働いています。ウェイトレスで」 「じゃあ、休みや一緒に過ごす時間が合わないんじゃないですか?」 「はい。彼女は深夜に帰ってきて、休みは月曜日や水曜日なので、土日休みの私とは合いませんね……」 彼女との時間は大切だろう。 とはいえ、逆に土日は自分の時間があるということだから、彼女のせいばかりではない。 「しばらくは、早めに出勤して職場で勉強するのもいいかもしれませんよ」 「はい、そうしたいと思います」 復習すると、暗記や理解はよくできていた。 やはり地頭はいい。 質問を受けたので解説をしていると、昨日に比べてぼんやり聞いているように見えた。 「もしかして、疲れてますか? 詰め込みすぎましたかね」 「いえ! 違うんです! 望月さんの解説があんまり上手いんで、聞き入っちゃいました。あと、望月さんて声もいいですよね」 進藤は、テヘッといった擬態語が出て来そうな笑顔を見せた。 呑気なものだ。 内容に集中して欲しかったが、率直に人を褒められるのは彼の長所だろう。 「ありがとうございます。あまり、面白いことが言えないので、せめて説明くらいはちゃんとできないと、と思ってますよ」 「あはは。同じことを兄も言ってました。やっぱり頭のいい人は似ているのかもしれませんね」 よっぽど兄が好きなんだな。 ブラコンは確定だ。

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