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第2話 雪の日に ②
今日はいつもより早く、保育園のお迎えに行けそうだ。
大急ぎで仕事着から私服に着替えた。
ビルの出入口から外に出ると、ビューっと強い風と共に粉雪が吹雪き、瑞稀は咄嗟に目を閉じた。
飛びそうになったマフラーを首に巻き直し、ダウンジャケットの前チャックを急いで閉める。
こんな日限って、手袋持ってくるの忘れちゃうなんて……。
そんな事を思いながら、洗剤や水で荒れ、冷たくなった両手を擦り合わせ、駅に向かう。
信号待ちで空を見上げると、灰色の空から粉雪が落ちてきて、瑞稀の頬に当たった。
粉雪を見ると、いつも思い出す。
20年前、母さんに手を引かれ、貴方の住むお屋敷で、貴方と初めて出会った日のことを。
あの日も今日のように、粉雪が風に舞っていましたね。
凍えるような寒い冬が過ぎ、暖かな風が吹き始め春が訪れると、いつも思い出す。
11年前、貴方の住むお屋敷から出ていき、貴方と離れ離れになってしまったことを。
桜の木の下、涙を堪えるが精一杯で『さよなら』と言えませんでした。
浴衣姿で夏祭りに向かう人達を見ると、いつも思い出す。
7年前、僕が働いていたバーで貴方と再会したことを。
夏の暑い夜、僕の作ったジントニックを飲む貴方の姿を見るのが、どれほど嬉しかったか。
残暑残る中、空を見上げうろこ雲を見つけると、いつも思い出す。
6年前、僕のお腹に中に貴方との子供がいることを告げず、貴方の前から姿を消した時のことを。
夏を惜しむように鳴いていた蝉の声を聞きながら、今度こそ、もう二度と貴方に会えないこと、覚悟したんです。
そしてまた冬が来て粉雪を見ると、思い出す。
貴方のことを。
どんな季節がやってきても、いつも僕の心には貴方との……晴人 さんとの思い出ばかりが浮かんでは消えていく。
貴方と出逢い、僕の世界が色付き始めた、あの頃を。
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