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第33話 ドライブ ⑤

「瑞稀、俺と結婚してくれないか……?」  晴人はポケットから掌サイズの箱を取り出し、震えた手で瑞稀に差し出す。 「え……?」  今、晴人が何と言ったか理解ができない。 「俺と結婚してください」  晴人が箱をぱかっと開けると、そこにはシンプルなシルバーのリングが入っていた。 「……」  あまりに突然のことすぎて、瑞稀の頭は真っ白。  何を言っていいかわからず、黙りこくってしまう。 「い、今すぐってわけじゃないんだ。瑞稀が20歳になった時の話で……。だから、返事は焦らないから、ゆっくり考えて。でも、心臓がもちそうにないから、早く教えて欲しいけど、何より…いい返事が欲しくて……って俺、何言ってるんだろう」  いつもの晴人では想像もつかない。  いつも余裕があって、冷静な晴人なのに、今は焦ったり、心配そうな表情になったり…。  一人百面相のようだ。 「一番言いたいのは、俺との未来を考えて欲しいってことで……」  恥ずかしそうに晴人は頭を掻き、そして瑞稀を見つめた。 「……」  瑞稀はただ晴人を見つめるだけで、微動だにしない。 「瑞、稀……?」  不安そうに晴人が覗き込むと、瑞稀の瞳からはポロポロと大粒の涙が流れた。 「え?え?瑞稀……? 大丈夫? 痛いところとかあるのか?」  ぶんぶんと瑞稀は大きく首を振る。 「泣くほど嫌だったのか?ごめん。瑞稀を泣かせるつもりはなかったんだ……。本当にごめん……」  眉を寄せ、今度は晴人が苦しそうな表情になる。  するとまた瑞稀を横に振る。 「じゃあ……」  涙声で瑞稀はこくんと大きく頷いた。 「?」  瑞稀が何に対して頷いたのか?晴瑞稀が泣いているか?晴人には理由がわからない。 「瑞稀……?」  不安そうに晴人が瑞稀を見ると、 「はい! 僕、晴人さんとずっと一緒にいたいです!」  涙をポロポロ流しながら、瑞稀は晴人に抱きついた。 「僕、晴人さんと番になりたいです!」  不安そうだった晴人の顔は、みるみるうちに紅葉し、喜びが満ち溢れてくる。 「それって……」 「僕、晴人さんと結婚したいです!」  抱きついたまま、瑞稀は晴人を見上げた。 「瑞稀、本当に? 本当にか?」 「はい!」 「本当に俺と結婚してくれるのか?」 「はい! 晴人さんと結婚したいです」 「これからずっと一緒だよ。それでも?」 「ずっと一緒にいたいです」  まだ信じられないっと言うように、晴人は何度も何度も確認する。 「もう瑞稀を手放してやれないよ」 「手放すつもりだったんですか?」 「絶対にない!」 「よかった。僕も晴人さんの隣、ずっといますから」  瑞稀の瞳から涙が溢れる。  先ほどのような不安で悲しい涙ではなく、嬉しくて幸せすぎての涙が。 「晴人さん、愛しています」  晴人を抱きしめる力を強くし、瑞稀は晴人を見上げると、頬を涙が伝う。 「俺も……俺も愛してる……」  上から覆いかぶさるように、晴人は瑞稀に優しくキスをした。  誓いのようなキスを。  ゆっくりと惜しむように二人は見つめ合いながら唇を離す。  晴人はシルバーのリングを取り出し、 「少し早いけど……」  と、瑞稀の左手の薬指にリングをはめた。 「瑞稀。俺は瑞稀のことを一生愛し続けるよ……」  リングの上からキスを落とした。 「僕も、一生晴人さんを愛し続けます」  リングを右手の指で、宝物に触るように瑞稀は触れた。

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