41 / 111

第43話 告白 ①

「瑞稀!!」  バーはまだ営業し始めたばかりの夕暮れ時。  街頭の光が灯るか灯らないか…、そんな時間。  いつもの待ち合わせ場所で待っていた瑞稀のそばに、晴人が駆けてきた。 「体調、よくないのか?」  心配そうに、晴人は瑞稀を見る。 「いえ、体調はいいのですが、今日は早く上がらせてもらったんです」  瑞稀は笑顔で駆けてきた晴人を迎えた。 「何かあった?」 「いえ……。今日は僕がいなくてもお店が回るってことだったんです」  これは正確には嘘ではない。  本当は『瑞稀が抜けても、なんとかやっていける』と言うことだった。  オーナーは晴人との話し合いは早い方が良いと、瑞稀を帰らせたのだ。 「ならよかった。瑞稀から仕事をあがったってメッセージきた時は、何かあったんじゃないかって心配したんだぞ」  晴人は瑞稀に右手を差し出す。 「詳しく書かなくてすみません」  そう言いながら、瑞稀は晴人と手を繋ぐ。 「俺もさっき帰ってきたところだから、夕飯何もできてなくて……。もし瑞稀の体調がよかったら、何か食べて………帰る?」  瑞稀の体調を心配しながら晴人が言う。 本当は早く帰って、赤ちゃんの話したいけど……。  ちらっと見た晴人の顔が、あまりにも出かけることへの期待で、キラキラしていたので、 「はい。食べて帰りたいです」  瑞稀はそう答えた。 「本当に!? 体調は大丈夫なのか?」  ワクワクが晴人から滲み出ている。 晴人さん、可愛い。 「はい、大丈夫です」  瑞稀は繋いでいた手を解き、晴人の腕に自分の腕を絡ませ、体を密着させる。 「じゃあ、瑞稀は何が食べたい?」 「えーっとですね……。しゃぶしゃぶが食べたいです」 「しゃぶしゃぶ? 外はまだ暑いのに?」  日が落ちると少し寒くなってきたが、半袖でも過ごせる気温。  そんな時に、しゃぶしゃぶなんて思いもつかなかったような晴人だったが、 「冷房の効いた部屋で食べるお鍋は美味しいじゃないですか。ほら、冬に暖房の効いた部屋で食べるアイスみたいです」  えへへと瑞稀が笑う。  晴人が近くにいるだけで、さっきまで頭の中を占めていた悩みがなくなっていく。  晴人との時間だけが、瑞稀を癒していく。   このまま時が止まればいいのに……。 「じゃあ、この近くで美味しい鍋料理の店は……」  スマホを取り出し、晴人は検索し始める。  最近、瑞稀の体調を心配して、出かけることを控えていたが、今日は思いもよらず日が高いうちに二人で出かけられて、晴人は嬉しそうだ。 「晴人さん……可愛い………」  気落ちが口から突いて出てしまった。  しまった!と口を抑えたが、もう遅い。 「瑞稀の方が可愛いよ」  晴人は瑞稀の額にキスをする。 「晴人さん、外ではダメです!」  額を抑えながら、瑞稀が頬を膨らませ、晴人を下から睨むと、 !!  晴人は体をかがめ、今度は瑞稀の唇にキスをする。 「晴人さん! 外ではダメです!」  もう一度キスをされまいと、瑞稀は晴人の唇を自分の手で覆う。 「大丈夫。誰も見てないって。それに見られていたとしても、夕方だから、よく見えないって」  口を塞いでいた瑞稀の手を晴人はそっと退け、微笑んだ。 そういう問題じゃ……。  本当に目撃者はいないのか? 瑞稀があたりを見回すと……。 「ねぇママ。さっき背の高いかっこいいお兄ちゃんが、あの兄ちゃんにキスしてたよ」  無邪気に母親に話す、幼稚園児ぐらいの女の子と目があった。 「あ! キスしてたお兄ちゃん」  指を刺されて、顔から火が出るかと思うくらい赤面する。  そして瑞稀に向かって満面の笑みで手を振る女の子に、恥ずかしさから顔を引き攣らた笑顔を向け、瑞稀は手を振り返した。

ともだちにシェアしよう!