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第42話 告白 ①

 瑞稀は目を真っ赤に腫らし、店に帰ってきた。 「瑞稀! その目、どうした!?」  瑞稀の顔を見たオーナーが駆け寄る。 「大丈夫です」  そう瑞稀は言うが、オーナーの顔を見ると後から後から涙が出てくる。 「ちょっとこい」  カウンターの奥で準備をしていたかすみに、店のことを任せたオーナーが、瑞稀をスタッフルームに連れて行く。 「何があった」  オーナーは瑞稀をソファーに座らせ、淹れたての温かい紅茶を瑞稀の前に出した。 「大丈夫です……」  涙をぐっと堪える。  喉の奥が締め付けられて、息がしにくい。 「心配するな、誰にも言わない。だから話してくれないか?」  震える背中をオーナーが摩ると、少しずつ息苦しさが治ってくる。  だが、どうしても言えない。  秘密にしていることが多すぎる。  恩人のオーナーに嘘をついてしまい、もう何もかも話せない。 「誰にだって秘密の一つや二つある。俺だってあるぞ。実は結婚してる……とかな」 「え!?」  まさかの事実に驚きすぎ、瑞稀の口から声が出た。 「入籍だけだけどな。先月したんだ」  頭を掻きながらオーナーは、照れくさそうに笑う。 「おめでとう……ございます」  急な展開に瑞稀は自分の問題を忘れてしまいそうだ。 「それでこれが俺の奥さん」  スマホの中のアルバムに入っていた写真を見せてもらうと、そこには幸せそうに笑うオーナーの顔と、隣で微笑む女性の姿が。 「この方って、確か半年ぐらい前からよくこられるお客様……ですか?」 ここ最近、お店に来られないから、何かあったのかな? って心配してたけど。 そうか。 オーナーを家で待ってたんだ。 「そう、あの子。俺だってまだ誰にも言ってない秘密がある。だから瑞稀にも秘密があってもいいんだ。だけど、その秘密が重くなり過ぎて、押しつぶされそうになった時は、吐き出したほうがいい」 オーナーは瑞稀の隣に座り、前を向く。 「……」 「瑞稀の持ってる秘密。晴人さんにも言えないようなことなんだろ? 俺でよければ聞くよ」   恋人である晴人さんに隠していることなのに、オーナーに言っていいのだろうか? でも、もう僕の中ではどうすることもできない……。 話してしまいたい。 聞いてほしい。 この苦しみから逃れられるなら、逃れたい……。  瑞稀の中で葛藤する。 「大丈夫。誰にも言わない」  瑞稀を真っ直ぐに見つめる目に、嘘はなかった。 オーナーになら……。  瑞稀は話始めた。  プロポーズされたことは晴人と話し合い、みんなには秘密にしようと言うことになっていたので話さなかったこと、妊娠のこと、偶然にも晴人と両親との確執のことを知ってしまったこと。  体調不良は『つわり』だったのに、『夏バテ』だと言ってしまったこと。  さっき晴人の母親にあって、別れてほしいと手切金を渡されたこと……。  秘密にしていたことを、吐き出すように話た。  瑞稀が話す間、じっと黙って聞いていたオーナーだったが、瑞稀が話おわると、 「よく一人で頑張ったな」  瑞稀の頭をポンポンと優しくたたいた。  胸につっかえていたものが、スッとなくなっていく。 もっと早くに話していれば……。 「瑞稀はどうしたい?」 「それは……」  晴人と一緒にいたい。  でも、一緒にいることは難しすぎる……。 「妊娠のことだけでも、話してみたら?」 「え……?」  瑞稀の表情が強張る。 「晴人さんなら、きっと受け止めてくれるさ」 「でも……」  でも受け止めてもらえなかったら…、僕はきっと立ち直れない……。  瑞稀は首から下げた指輪を、服の上から握った。 「俺は最後まで瑞稀の味方だ。だって俺は瑞稀の兄貴だからな」  幼いこどもをあやすように、オーナーは瑞稀の頭を撫でた。

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