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第57話 再開 ①
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次の朝。
道路や家の屋根に積もった昨晩の雪が、陽の光にあたりキラキラと輝く。
雪の影響で電車が止まるかと思われたが、そこまで酷くなく、電車は今日も通常運転。
千景を保育園に連れて行き、その足で瑞稀は職場へと向かう。
いつもと同じ朝。
「おはようございます」
制服に着替え、清掃用具が置いてある場所に行くと、そこにはもう同僚の幸恵 と和子 がいた。
「瑞稀くん、おはよう。昨日の雪は凄かったね」
「千景くんのお迎えは間に合ったかい?」
幸恵と和子が聞くと、
「はい。幸恵さんと和子さんのおかげで、間に合いました。本当にありがとうございます。それで、あの、これ、保育園で『雪だるま』の折り方を教えてもらったみたいで、千景からお二人に渡して欲しいと…」
瑞稀は二人の前に白い折り紙で折られ、カラーペンで目と鼻と口を描き、頭に赤と黄色の帽子を被った雪だるまを差し出した。
「まぁ、可愛い雪だるまだこと」
「本当に。千景くんに『ありがとう。大切にするね』って伝えてね」
幸恵も和子も大喜び。
「汚してはいけないから、掃除に回る前に鞄にいれてこようかしら…。あ、でも、もうこんな時間。急がないと」
和子が腕時計で時間を確認する。
だが、いつも仕事を始める時間より20分ほど早い。
「今日、何か急ぎの場所があるんですか?」
「ええ、そうなの。副社長室、今日だけ早く掃除して欲しいって。なんでも最近新しく就任した副社長のところに、朝からお客さんが来るらしくてね、それの準備だそうよ」
「そうなんですね」
瑞稀は初耳だ。
「新しい副社長、会長の孫の昴さんで、最近まで支店の方で働いてたみたい。それで秘書の人、山崎さんって言ったかしら?副社長の学生の時からの親友で、副社長が就任する時に一緒に連れてきたんみたいでね、二人ともすごく仕事ができて優しくてイケメンだって社員の人が騒いでたわよ」
さすが情報通の幸恵。色々なことを知っている。
だがそれより、瑞稀は『山崎』という名前に反応してしまう。
「私たち、千景くんからのプレゼント鞄に入れてきたらすぐに向かうから、悪いんだけど瑞稀くん、先に副社長室に行ってくれる?」
「ええ、もちろんです」
気になりことをかかえつつ、瑞稀はいつもの掃除用具セットを荷台に乗せ、
「それでは、行ってきます」
「ありがとね」
二人に見送られながら、瑞稀は副社長室へと向かった。
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