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第59話 再開 ③
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瑞稀は無我夢中で誰もいない掃除用具室まで走った。
用具室に入ると、急いでバタンッとドアを閉め、肩で息をしながら、その場に座り込んだ。
どうして……!
どうして、ここに晴人さんが!?
驚いた晴人の顔が蘇る。
幸恵さんが言って得た『山崎さん』って、晴人さんのことだったんだ!
でもどうして?
どうして副社長秘書をしているの?
どうして晴人さんが、ここに!?
晴人さんは、許嫁の方と結婚してご実家の病院を継がれたはず。
病院で院長になられているはず。
なのに……どうして……。
どうして……。
瑞稀は先ほど目の前で起こったことが、まだ理解できない。
走ってきたからか、突然晴人と再会したからか、心臓が激しく脈打ち苦しいほどだ。
少しでも落ち着こうと、瑞稀は胸に手をあて大きく深呼吸をする。
何度もしていくうちに、少しずつ冷静さをとりもどす。
どうしよう……。
違う不安が、頭をよぎる。
掃除用具、部屋の前に置いてきてしまった。
和子さんや幸恵さんに、先に行くって言ったのに、僕は用具室にも戻ってきてしまっている……。
副社長室に戻らないといけない。
仕事をしないと。
でも戻れば、晴人さんがいる。
あんな別れ方をしておいて、晴人さんにどんな顔で会えばいいのか……。
……。
瑞稀が考え込んでいると、
—トントントン—
休憩室のドアがノックされた。
!!!
ビクッと肩を上下させ、咄嗟に息を顰めてしまう。
「瑞稀くん」
ドアの向こうから話しかけてきたのは、幸恵。
「詳しい話はわからないけど、副社長室で何かあったんでしょ?」
「……」
なんと答えていいかわからず、瑞稀は黙りこくってしまう。
「副社長室 は私たちがしておくわ。だから落ち着くまで用事日 でゆっくりしておいで」
責めるようでもなく、優しい口調で幸恵はそう言うと、ドアの前から立ち去った。
……。
瑞稀は幸恵に何も言えなかった。
ただ、このまま用具室 に隠れていてはいけない。と言うことはわかった。
だけど……。
今晴人にもう一度会えば、ずっと一緒にいたい気持ちが蘇ってきそうだった。
あんな酷い去り方をしたのに……。
晴人を目の前にすると、涙が出てきそうだ。
晴人さんは、もう僕の顔なんて見たくないはずだ。
そう思うのに、自分勝手なのはわかっているが、晴人にそう思われてしまうのが苦しい。
いつまで経っても、晴人さんとの日々を忘れられないのは僕だけ。
一瞬、副社長室の掃除を手伝おうかと廊下に出たが、どうしても一歩が出ずに、しばらく廊下に立ち尽くす。
仕事を、仕事をしないと。
でも、副社長室 には行けない。
瑞稀はトイレ掃除用のセットを手に持つと、トイレ掃除に向かった。
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