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第87話 翌日 ②
「わかった。今は起きたばかりだから、体に力がうまく入らないかと思うけど、もうすぐしたら動けるようになると思う。それまで少し休憩するといいよ」
「……」
「それから俺が保育園まで送ろうか?」
「え!?保育園までですか?」
「ここから保育園まで遠いだろうし、保育園からの帰りだって車で帰ったほうが瑞稀も千景くんも楽だろう?」
「……」
晴人の気配りは嬉しい。
だが晴人と一緒に保育園に行くとなると、必然的に千景と晴人が会うことになる。
そうなると、晴人そっくりの千景を見て、晴人が千景の父親だと知られてしまう。
それだけは避けたかった。
「いえ、体調も戻ってきましたし、1人で迎えに行けます」
瑞稀は立ちあがろうとしたが、やはり足に力が入らず倒れそうになり、晴人が瑞稀を支えた。
「無理しないほうがいい」
「でも……」
自分自身の体調がいつ戻るか、焦りばかりがつのる。
「瑞稀は俺と千景くんを会わせるのが嫌?」
「!!」
「瑞稀は俺のことが嫌いだから、俺と千景くんを会わせるのが嫌?」
「……。それは……」
「どっちが本当の瑞稀?」
「え?」
「本当の瑞稀は、俺のことが大嫌いな瑞稀? それとも昔みたいに話しいてくれる今の瑞稀?」
「!!」
「俺は瑞稀のことを愛している。だけどわからなくなってくるんだ。何が瑞稀の幸せで、何を必死で守っているのか……」
「……」
「なぁ瑞稀。瑞稀にとって俺は本当にいらない奴なのか? 必要とされていない?」
「……」
「俺は瑞稀や千景くんを守ることは、できないのか?」
「……」
「瑞稀の心の中にいるのは誰なんだ?」
「……」
「昔置き手紙に書いてあった奴なのか?」
「……」
「千景くんは本当にそいつの子なのか?」
「……」
「千景くんは、本当は……誰の子なんだ?」
「!!」
真実を知っていそうな晴人の言い回しに、瑞稀はビクッとした。
「どれかひとつだけでいい。答えてくれ……。何か言ってくれ……」
「それは……」
真実を全て洗いざらい話たかった。
今も昔も晴人ただひとりのことを愛していることも、千景や自分に晴人が必要なことも、ずっと側にいてほしいことも、千景が晴人の子どもだということも……。
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