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第100話 告白 ③

 でも、一つ気がかりなことがあった。  それは晴人と両親のこと。  瑞稀が晴人と一緒にいるということは、晴人は両親と険悪さが酷くなるということだ。 「僕と一緒にいては晴人さんは、旦那様と奥様と険悪な関係になって……」  瑞稀がそこまで言った時、 「親父たちは関係ない。それにもうあの人たち(・・・・)とは完全に縁を切っている。でも、瑞稀の話を聞いて、あの人達がしたことを俺はどうしても見過ごせない。ちゃんと瑞稀に謝罪をさせようと思う」  晴人はスマホを取り出す。 「ちょっと待ってください。僕はそんなことしていただかなくても……」 「いや、あの人達に、自分たちがどんなことをしたか、思い知ってもらう必要がある。そうじゃなかったら、またあの人達は俺の知らないところで瑞稀を傷つけるかも知れない」  こうなってしまった晴人はもう止められない。  ガンとして譲らず、両親に電話をかける。 「ご無沙汰しています。今日はどうしても話し合っておかないといけないことがありまして、電話しました。日にちは明日の14時でお願いします。……。そちらの都合は聞いていません。必ず明日、14時に店に来てください。店の場所はメールで送らせていただきます。では失礼します」  言葉使いはいつも通りだが、言葉の端々に苛立ちと嫌悪感が滲み出ていて、一方的に話を進め、一方的に電話を切った。 「もし瑞稀があの人達に会うのが嫌だというなら、俺一人で行ってくる。でも、俺としてはあの人達に直接瑞稀に謝ってほしい」  瑞稀としても晴人の母親渡された手切れ金の小切手を、直接返したい。  でも千景のこともあり、千景のそばから離れることはできない。 小切手は晴人さんに託そうか……。  そう考えていた時、 「千景君のことは俺に任せてくれよ」 「副社長!」  昴が瑞稀と晴人の前に現れた。 「聞くつもりはなかったんだけど、二人の話が聞こえてしまって。俺でよかったら千景君のそばにいるよ」  昴の登場で、晴人の周りの空気がピリっとする。 「二人の経緯はわかったし、千景君の父親が晴人だということもわかった」 「……」 「本心を言えば、そう簡単に今の状況を受け入れられないというのが本当のところだ」  昴の言葉を聞いて、晴人が眉をピクリとさせた。 「だが、もう二人の間に割り込もうとは思わない。俺にとって晴人は唯一の親友で弟みたいな存在だし、瑞稀くんに対しての気持ちは、時間はかかるかも知れないが折り合いをつけたいと思っているし、晴人の運命の人は瑞稀くんで、瑞稀くんの運命の人は晴人だと思っている。俺はそんな二人の幸せを、一番願っているし見守っていきたいと思っている」 「……」 「だから明日、俺が千景君のそばにいるから、二人はしっかりと話をしてくるんだぞ。あと晴人。ちゃんと瑞稀くんのそばにいてやれよ。もう後悔もすれ違いもするな。いいな」  昴は気合いを入れるように晴人の背中をバンっと叩くと、瑞稀と晴人に背をむけ振り返ることなく、病院を後にした。  

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