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第3話 星をみる会
結局、橘の勧誘するサークル『星を見る会』にまんまと入ってしまった。
『星を見る会』は、定期的に天体観測をしたり、宇宙科学館やプラネタリウム巡りをする。
半分くらいの人が真っ当に活動していて、半分は人脈作りの飲み会サークルとしてに来ているらしい。
ただ、サークルに入った動機は、最初こそ橘と接点を持ちたいからという不純なものだったが、中学理科の先生を目指している自分は、天体に詳しくなっておきたいという気持ちもあった。
そんなある日、考えれば当たり前すぎるショックを受けることになる。
橘に、彼女がいたのだ。
そりゃ、そうだろう。
イケメンで人たらしが漏れ出してるような男に彼女がいないわけがない。
なぜかガッカリしている自分がいた。
初めて会ったときから、約2ヶ月しか経ってない。
ちょっと優しくされただけで舞い上がってしまった。
あちらは、これが「通常運転」。
誰にでも優しいのだ。
それを、生まれてこのかた恋愛をしたことのない自分はその気になってしまった。
もし彼女がいなかったとしても、それが何だというんだ。
男の俺が彼女になれるわけがない。
それで、橘に女の影がチラつくたびにオレは右往左往するのか。
不毛。
不毛すぎる。
やめよう、橘を意識するのは。
幸い友達も増え、授業もサークルも楽しい。
大学には、恋愛をしに来たんじゃないんだ。
ちゃんと勉強に専念しよう…!
そう決意した矢先だった。
「アンプデモアで、バイトしない?」
橘は少し困った様子で話しかけてきた。
「1年の時はまだ良かったんだけど、段々忙しくなってきて…。今、あそこのウエイターはオレしかいないんだよね。週1でもいいから、来てくれないかな?」
あのファンシーでオシャレなカフェレストランで、不器用な俺がウエイターをやる?
雰囲気ブチ壊しだろう。
橘目当てのお客さんは来なくなってしまうかもしれない。
「…あそこは…顔採用じゃないんですか?」
「え?そんなことないと思うけど…。ま、仮にそうでも、那央なら大丈夫だよ。少し、前髪を上げれば。」
そう言って橘が俺の前髪に手を伸ばし、そっとかき上げた。
腰が砕けるかと思った。
スキンシップにも満たないささいなムーブに動揺が走る。
「やっぱりほら、少しおでこが見えた方がいいと思うよ。」
橘はスマホで髪型を検索した。
「こういう髪型とか、どう?」
自分が橘のスマホを覗き込むと、橘もスマホを覗き込んだ。
急に橘と顔が近づいて、心臓がドキドキした。
「び、美容室は、近々行こうと思ってたんで、こんな感じで頼んでみます…。」
しどろもどろに答えた。
もちろん、バイトも引き受けた。
なんて俺はちょろい奴なんだ…。
なんだったんだろうか、あの決意は。
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