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★第16話 那央と橘の夜

橘の吐息から、甘い香りとお酒のにおいがする。 橘の唇が那央の唇をゆっくりはんだ。 橘の唇は、しっとりと柔らかく、温かかった。 那央は橘の首の後ろに腕を回し、橘の頭を引き寄せた。 唇がより密着する。 橘の舌が那央の唇を優しくなでる。 「あぅっ……!」 自然と声が出た。 橘の愛撫で、那央の唇はゆっくりほぐれていった。 那央の体に痺れるような快感が広がる。 橘の舌が入ってきた。 今までも、何度も橘とキスをする妄想はした。 妄想の中の橘は、まるで白雪姫の王子様のように綺麗なキスをしてくれた。 でも、本当の橘は違った。 那央の、柔らかくなった唇と唾液で潤った口の中で、橘は激しく舌を動かした。 息をする間もない。 あんなに優しい言葉を話す橘の舌が、今は性欲に狂った獣のように口の中に入り込んでくる。 初めての快感に腰がのけぞる。 唾液が絡む音が激しくなっていく。 「ん……っ!あ……っ!」 体から力が抜ける。 相手が大好きな橘とはいえ、那央は少しひるんだ。 那央の腕の力が緩み、さっきまで橘と密着していた体が少し離れる。 いつもの橘なら、那央の変化に気づいて辞めてくれたかもしれない。 そんな想像とは裏腹に、那央の腰は橘の腕でグッと強く抱き寄せられた。 下半身が密着し、互いが興奮していることがわかる。 同時に、より激しく唇を吸われる。 「んっ!んあっ!」 体が熱い。 二人の荒い息づかいが部屋に響く。 口の中は散々犯され、ねっとりした唾液が溢れる。 橘の手が、那央の服をたくしあげ、乳首の先にそっと触れた。   「ぁあっ…!」 そんなちょっと触れられただけで感じてしまうなんて、これからどうなってしまうんだろう。 バカみたいに感度がいい自分が恥ずかしくて、体を引き離そうとするが、橘の力が強く、動けない。 橘が唇を少し離して言った。   「那央……可愛いよ……。」 うっとりとした目で見つめられる。 さっきまでの激しい欲情が嘘みたいに、橘は美麗を保っている。 それに比べて、那央の下半身はもう待てない。 早くどうにかしてほしい。 攻められているのか焦らされているのかわからない。 「俺も……先輩のことが好きです……。」 那央は潤んだ目で橘を見つめて言った。 橘は微笑んで、また軽くキスをした。 橘は那央の服を丁寧に脱がした。 橘も服を脱ぎ、那央に覆い被さる。 男らしい体つきを目の前にして、胸がキュンとする。 橘は耳やうなじ、首に舌を這わせながら、那央の下半身を弄った。   「うあっ……!」    快感からの喘ぎ声がすぐ出てしまう。 「那央……すごくいやらしい顔してるよ……。」 橘の視線が絡みつく。 恥ずかしい一方で、余計に興奮が増す。 快感の波は完全に橘次第で、那央はされるがままに喘いだ。 彼女とのセックスではこうはならない。 男に巧みに攻められて、悦んでいる自分がいる。 「もぉ……無理です……。早く……イカせてほしい……。」 息も絶え絶えに懇願した。 「いいよ……。那央が気持ち良くなってくれると、俺も気持ちいいから……。」 橘の手の動きが強くなった。 「んあぁ……っ!」 イキたい気持ちと、見られたくない気持ちでぐちゃぐちゃになる。 「み、見ないで……っ。」 「そう言われると、見たくなるよね。」 「や、やだ……!恥ずかしい……っ!」 「俺は、那央の恥ずかしいところ、たくさん見たいよ…。」 橘に見られる恥ずかしさを凌いで、体の快感が勝った。 「あ、あぁ……っ!」 那央は橘の手で果てた。 体がぐったりとし、荒い呼吸が続く。 呼吸を鎮めようとしていると、橘はすぐに那央の体を愛撫し始めた。 「や!やめてっ!今触られたら……!」 「那央があんまり可愛いから、いじめたくなってきた。」 橘はにやっと笑って言った。 普段はなんでもないところなはずなのに、橘に触れられると快感が走る。 「やっ…あぁっ!ダ、ダメ……!もう……!」 那央は敏感になった体にすぐに快感を与えられ、耐えきれなくて抵抗しようとするが、橘の力に勝てない。 「き、気持ち良くて……耐えられない……。も、もう許して……。」 涙目で訴える。 「こんなに可愛い那央を見て、辞めれるわけないじゃん……。」 橘は吐息混じりにそう言って、さらに激しく那央を攻めた。 時は、0時に近づいていた。

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