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第25話 那央への報告

その日の夜、バーが終わり、いつもは自宅に帰るのだが、那央に会いたくなって電話をした。 那央は少し寝ぼけた声で電話に出た。 今からアパートに行きたいと話すと、快くOKしてくれた。 コンビニでアイスを買っていく。 2つ買うが、どちらも那央が好きなものだ。 部屋に入ると、那央が温かいお茶を淹れてくれた。 「抹茶といちごチョコ、どっちがいい?」 「あ!これ、どっちも季節限定のやつ!……どっちも……食べたい……。」 那央が本気で悩んでいる。 那央は小さなことに本気を出すところが可愛いと思う。 自分なんて、大体のことがどうでもよいタイプだ。 だから、付き合う前は、那央が気になるものを見に行ったり、買いに行くのは楽しかった。 自分の周りに、こんなに面白いものがたくさんあるんだと初めて知った。 「どっちも半分こしよう。どっちから食べる?」 「じゃあ、いちごチョコで。」 那央はアイスバーの袋を開けた。 橘もお茶をすする。 少し落ち着いたので、藤波のバイトの話をした。 「住み込み……ですか……?」 「うん。まあ、家政婦みたいなもんだよ。俺をモデルに小説を書きたいらしくて……。まあ、俺にそんな面白いエピソードなんてないけどね。」 「その……それって……体の関係も含むんですか……?」 那央がすでに泣きそうな目で見てくる。 那央は本当に顔にでやすい。 「そういう話は出てないし、契約書にもないから、大丈夫だよ。こんなことを言うのもあれだけど、お給料がいいから、翌月くらいまでは俺も余裕があるんだ。終わったら、二人で旅行にでも行こうよ。」 橘は那央の頭を撫でてそう言った。  「それは……楽しみですけど……。」 「……アイス溶けちゃうよ。」 那央は慌ててアイスをかじった。 「その……俺ともまだ同棲してないのに、先に他の人が……っていうのが、なんか……。」 「形だけだよ。一カ月だけだし。」 那央のアイスを持つ手を引き寄せて、橘もアイスをかじった。 「バーのバイトは、代打だから減らせないけど、カフェの方は少し減らそうかと思って。」 「カフェは…確かにもう一人いますけど……。なんか、結果的に、俺と会う日にち、減ってませんか…?」 那央の声が沈む。 「その分、丸一日休みの日を増やせるからさ。働いてる時や帰ってから二人で過ごそうとしても限度があるじゃん。……ほら、アイス溶けてる。」 那央はハッとしてアイスを食べた。 橘は、食べ終わったアイスの棒を那央の手から取り、アイスが垂れた那央の手を舐め始めた。 指の合間に舌を這わせると、那央はビクッと体を震わせた。 那央の顔がにわかに赤くなる。 こんなに毎回初々しい反応をしてくれると、こちらもやる気が出る。 その手を引き寄せて、那央にキスをする。 唇も、口の中もいちごチョコ味だ。 那央は相変わらず、うっとりしながらキスをしてくれる。 もっと悦ばせたくなる。 橘も、同棲するならもちろん那央がいい。 ただ、こんな調子で本当に那央と同棲する日が来たら…日常生活はできるんだろうか?

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