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第39話 新しい生活

藤波の提案通り、橘は研究と試験対策に専念しつつ、藤波の執筆活動の手助けをすることにした。 執筆活動のバイトは大してやることがなく、実質藤波からの資金援助のようなものだった。 「改めて君に仕事を頼もうと思うと、段取りをつけるのが面倒で面倒で。まあ、僕の虚無な金が人類の未来に繋がってるならいいんじゃないかな。」 と言う。 アンプデモアはイベントの日だけヘルプに入り、バーの仕事は辞めることができた。 体調不良のバーテンダーは、角田からストーカーにあっていて、しばらく離れたかったらしい。 そのターゲットが俺に移ったことで復帰できたとのことだ。 夜は大抵、那央のアパートに帰り、ほとんど同棲状態になった。 ――――――――――――― 那央がベッドの中で橘に擦り寄ってくる。 橘は那央の頭をよしよしする。 「……最近、頭をなでるだけで、何もしないのはなんでですか?」 「だって、あんまり性欲が強かったら、那央のお尻が大変でしょ?」 「そうですけど……。なんでこんなに一緒にいるのに、1週間も我慢できるんですか……?」 「那央が、もじもじしてるのを見てるのが、楽しいからだよ。」 「………………。」 「性欲が強いことをバカにされたの、忘れてないからね。」 「別にバカにはしてないですよ!」 那央が困ったような怒ったような顔をしている。 本当は毎日ムラムラしているが、那央から誘ってほしかった。 那央は意を決して橘に覆い被った。 キスをしてくる。 那央のキスは猫のようで可愛い。 橘も那央の背中に腕を回してキスを受ける。 「して欲しかったら、おねだりして。」 「……先輩とエッチがしたいです。」 「何その、面接の受け応えみたいな。」 思わず笑った。 「だって!おねだりって言うから!」 那央は顔を真っ赤にしている。 「もうちょっと可愛く……なんかないの?」 那央は一瞬何か考えた様子だったが、悲しそうな目をしてこちらに背を向けて横になってしまった。 「ごめん。さっきの那央も、可愛かったよ。」 那央のお腹をくすぐる。 「ちょっと!やめてっ。」 那央が笑いながら身をよじる。 その勢いで那央の上に乗り、キスをする。 那央の感じるポイントはわかっている。 那央が大人しくなって、二人の静かでまったりとした時間が流れた。 「愛してるよ。」 「……そういえば許されると思ってませんか?」 「……那央なら……チョロいから、いけるかな、とは思ってる。」 「わかってます、わかってますよ。どうせ、俺も、先輩が好きでしょうがないんです。」 二人は笑いあった。 この溢れる愛は、父と母の純愛遺伝子二人分なのだからしょうがない。 愛しい人。 この広大な宇宙に生まれた、小さな恋心に橘は感謝した。 - 第二章 橘の献身〈完〉-

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