55 / 94
★第56話 観光
残りの二日間は観光に充てられた。
エッフェル塔、凱旋門、美術館にヴェルサイユ宮殿など、
有名どころをまわる。
獅堂が言う。
「フランスはなかなかに治安が悪いんだ。街中でひったくりがあるし、美術館にも高級ブランドに身を包んだスリがいる。二人は俺と離れないように。翔優も、要芽と離れないように気をつけてね。」
川沿いを車で走ると、1人用のテントがところ狭しと並ぶ。
仕事も住まいもない、移民のテントだ。
彼らは盗みをしないと生きていけない。
美術館に入ると、かなりの人がいた。
獅堂はまだいいとしても、僕らのような貧弱なアジア人の子どもはカモられそうだ。
そう思ったとき、翔優が手を繋いできた。
「まあ……君はぼんやりと絵画を見てて誘拐されそうだから、手を繋いでおく方が無難かもね。」
獅堂は笑ってこっちを見ている。
「何がおかしい。」
「要芽にも、人の心があったんだな、って。」
「フランスに来てまで、面倒はごめんなんだよ。」
――――――――――――
その日の夜、翔優はまたベッドに入って来た。
「……君も強情だね。」
翔優の手が、そっと要芽の腰骨に乗せられた。
「……そんなにしたいのかい……。」
「はい……。」
「……別に僕が頼んだんじゃないよ。これは君のわがままだ。勘違いしないで。」
「はい。」
「じゃあ、好きにすればいいよ。」
僕は体を仰向けにした。
あの糞教師のように子どもにやらせて喜ぶ趣味はないし、そもそも身体の快楽にも興味は薄い。
翔優のことは不憫に思うが、この行為を好意的に受け取るほど僕は愛情馬鹿ではない。
ただ、翔優の欲情にさらされたまま過ごすのが面倒だっただけだ。
翔優は見た目こそ可憐でみんな騙されているが、最近は、僕を見るときは男の眼で見ている。
今は立場や力の差で控えめだが、これで体格が大きくなったらわからない。
まして、彼は性暴力を受けて、彼の中の常識が変わってしまっている。
彼の過去を知る前から、いつかはこうなるかもしれない、とは思っていた。
翔優は僕のズボンを下ろすと、そっとそれを持ち上げて舐め始めた。
たっぷりの唾液で包んで、唇と舌を絡ませていく。
不思議とその姿は、箏を演奏しているときの印象に近かった。
翔優の表情に、恍惚が見てとれる。
陰茎自体にそんな価値は無い。
が、そこに仮想の世界を見て、すがりたいものがあるんだろう。
翔優の荒く熱い息がかかる。
翔優は口に含みつつ、手でしごき始めた。
下半身に刺激が走る。
「……翔優、そのやり方は、先生から教わったのかい?」
「……はい……。」
一つ一つ指導されて、健気に習う幼い翔優の姿が思い浮かんだ。
翔優の手が激しく動く。
「……翔優、もういいよ、出そうだから。」
そう言うが、翔優は辞めない。
体の反応のままに出した。
翔優はそれでもまだ離さず、僕のものをペロペロ舐めてはキレイにしようとしていた。
「……こんな擬似的な生殖行為に意味があるとは思えないけど。」
翔優がようやく離れて、僕は自分のものをしまった。
ともだちにシェアしよう!