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★第56話 観光

残りの二日間は観光に充てられた。 エッフェル塔、凱旋門、美術館にヴェルサイユ宮殿など、 有名どころをまわる。 獅堂が言う。 「フランスはなかなかに治安が悪いんだ。街中でひったくりがあるし、美術館にも高級ブランドに身を包んだスリがいる。二人は俺と離れないように。翔優も、要芽と離れないように気をつけてね。」 川沿いを車で走ると、1人用のテントがところ狭しと並ぶ。 仕事も住まいもない、移民のテントだ。 彼らは盗みをしないと生きていけない。 美術館に入ると、かなりの人がいた。 獅堂はまだいいとしても、僕らのような貧弱なアジア人の子どもはカモられそうだ。 そう思ったとき、翔優が手を繋いできた。 「まあ……君はぼんやりと絵画を見てて誘拐されそうだから、手を繋いでおく方が無難かもね。」 獅堂は笑ってこっちを見ている。 「何がおかしい。」 「要芽にも、人の心があったんだな、って。」 「フランスに来てまで、面倒はごめんなんだよ。」 ―――――――――――― その日の夜、翔優はまたベッドに入って来た。 「……君も強情だね。」 翔優の手が、そっと要芽の腰骨に乗せられた。 「……そんなにしたいのかい……。」 「はい……。」 「……別に僕が頼んだんじゃないよ。これは君のわがままだ。勘違いしないで。」 「はい。」 「じゃあ、好きにすればいいよ。」 僕は体を仰向けにした。 あの糞教師のように子どもにやらせて喜ぶ趣味はないし、そもそも身体の快楽にも興味は薄い。 翔優のことは不憫に思うが、この行為を好意的に受け取るほど僕は愛情馬鹿ではない。 ただ、翔優の欲情にさらされたまま過ごすのが面倒だっただけだ。 翔優は見た目こそ可憐でみんな騙されているが、最近は、僕を見るときは男の眼で見ている。 今は立場や力の差で控えめだが、これで体格が大きくなったらわからない。 まして、彼は性暴力を受けて、彼の中の常識が変わってしまっている。 彼の過去を知る前から、いつかはこうなるかもしれない、とは思っていた。 翔優は僕のズボンを下ろすと、そっとそれを持ち上げて舐め始めた。 たっぷりの唾液で包んで、唇と舌を絡ませていく。 不思議とその姿は、箏を演奏しているときの印象に近かった。 翔優の表情に、恍惚が見てとれる。 陰茎自体にそんな価値は無い。 が、そこに仮想の世界を見て、すがりたいものがあるんだろう。 翔優の荒く熱い息がかかる。 翔優は口に含みつつ、手でしごき始めた。 下半身に刺激が走る。 「……翔優、そのやり方は、先生から教わったのかい?」 「……はい……。」 一つ一つ指導されて、健気に習う幼い翔優の姿が思い浮かんだ。 翔優の手が激しく動く。 「……翔優、もういいよ、出そうだから。」 そう言うが、翔優は辞めない。 体の反応のままに出した。 翔優はそれでもまだ離さず、僕のものをペロペロ舐めてはキレイにしようとしていた。 「……こんな擬似的な生殖行為に意味があるとは思えないけど。」 翔優がようやく離れて、僕は自分のものをしまった。

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