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第82話 相談
「と、いうわけなんだけど、どうしたらいい? 」
あの後、プチ打ち上げにみんなで酒を飲み、また宿泊することになった。
解散後、樋野はすぐに橘と那央の部屋に行き、泣きついた。
「そんなことになっていたんですね……だから要芽さんは明け方にこっそり出て行ったのかも……」
橘が言った。
「もどかしいですね……翔優さんと要芽さん……お互い大切に思いやっているのに……」
那央もしみじみと言った。
「翔優君は不器用だし、藤波さんは親心が邪魔してるんだよな。はたからみたら、両想い以上だろ」
それを聞いて二人は笑った。
「たしかに、両想い、超えてるよね」
那央が言った。
「うん。拗れてるって思ってるのは、二人だけだよ」
橘は笑い涙を拭った。
「翔優さんと樋野さんも合いますよね」
那央が樋野を見て言った。
「合うって? 」
「翔優さん、料理ができちゃうから、アンプデモアでも料理したら、そのまま帰っちゃうんです。樋野さんみたいに、内面まで踏み込んでくれる人、なかなかいないと思うんですよね。翔優さんにとっては、新鮮なんじゃないですかね……」
「そうかな……偉そうなおじさんになっちゃったな、って、自分としてはモヤモヤしてるけど……」
30歳は若くないんだな、と実感した。
「俺も、樋野さんと翔優さんは合うと思いますよ。アンプデモアは、翔優さんの先輩のお店で、翔優さんにとってはボランティアみたいなものなんです。だからオーナーも注文はつけないし。そこいくと、樋野さんの仕事に対する姿勢は、刺激的だと思います。なんせ、藤波さんが認めた人ですから、樋野さんは」
橘が言った。
「え?認めた?藤波さんが、俺を? 」
「要芽さんは職業病なのか、人と話す時にインタビューになるんです。だから、あの二次会で樋野さんと話した結果、翔優さんを任せられるって、踏んだんだと思います。要芽さんの人を見る目は間違いないと思うんで、樋野さんの想いをそのまま翔優さんに伝えていっていいんじゃないですかね」
そうだったのか……
ますます藤波の、翔優に対する愛を感じた。
「よし!俺も一肌ぬぐよ!彼らの幸せのために! 」
「いっそ、樋野さんが翔優さんと付き合ったらどうですか? 」
橘の意外すぎる提案に目が点になった。
「え……な、なんで?」
「恋は人を変えるじゃないですか。それに、もしかしたら要芽さんも、本当に翔優さんがいなくなると思ったら、焦るかもしれないし」
変わるのはね、きっと俺の方だよ。
しかも抜け出せない沼の方に……。
「浮気くらいで焦るかな……藤波さん……」
那央が心配そうに言う。
「本の中の、貴族社長はそうだったよ」
「それは小説じゃん……」
「あ、樋野さんがもし付き合えたらなんですけど、翔優さんは毎日が希望らしいんで」
「毎日?何が?」
「夜の営みが」
あんなエロいキスが毎日……
ぐぅ……それ以上に藤波の親心は固いってことか……信じらんねぇ……
樋野は悶えた。
樋野の様子を見て橘は笑い、那央は顔を赤くした。
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